読み終わると、なんとなく戦時中の医師の忙しさがじわりと伝わって来、その忙しさに臆することなく、避けて通るでもなく、真正面から立ち向う姿がはっきりと見て取れることに気づく。そして、その忙しさを本当に紛らわし、次への英気を養うために、いろいろな騒ぎを起こしていることに気づく。さらに、その騒ぎはある意味ではわざと、またある意味では必要に応じて自分たちの本当の意見を通そうとするために必要なものであることに気づく。 つまりこの本は、馬鹿騒ぎをする戦時中の医師、という立場を借りて、戦争での悲惨さや、それに対して真剣に働く人々がいたことを皆に知らせようとする気持ちが伺える。コミカルが先に立つ感じがするが、読めば読むほど、その楽しさと裏腹の場面が見えてくる。
単に戦争反対を叫ぶだけでなく、不謹慎さの中にも戦争の裏方の真実を伝えようとする本であると思う。
たとえば平均睡眠時間の縮小から、朝型、夜型の価値が混入している事に筆を進めるあたりかなり興味深いのだがここも問題提起のみで終わってしまう。これはもちろん電化製品の浸透と関係があるわけであり、そのようなものが伝統的価値をも揺るがすという事態はおもしろい。朝型とは労働に適した生活形態であり、労働至上主義の残滓であろう。それが否定されるということは労働観の変遷もそこには見出せるわけであって、本来ならばかなり大掛かりな探求になるはずだ。 とにかく材料の集積所のような一冊で、自分の問題意識の命題化には寄与するかもしれない。