|
[ 文庫 ]
|
後宮小説 (新潮文庫)
・酒見 賢一
【新潮社】
発売日: 1993-04
参考価格: 500 円(税込)
販売価格: 500 円(税込)
|
・酒見 賢一
|
カスタマー平均評価: 4.5
最後までワクワクをくれる。 どのキャラクターにも独特の「色」があり、どのシーンにもインパクトがあり、最後まで「この先はどうなるんだろう」と思わせてくれる小説でした。タイトル通り王宮を舞台にしたものですが、そのような作品に見られる重厚さはあまり感じさせず、むしろ軽快という印象を受けました。随所に若干性的な表現もありましたが、それでも下品にはならない点も魅力的だと思います。
ラストも清涼感があって、久々に爽やかな気分になる小説を読みました。
ファンタジーノベル大賞受賞作とありますが、ファンタジー好きでなくとも楽しめる小説だとおすすめします。
トンネルを抜けると 1989年、ファンタジーノベル大賞第一回受賞作。選評委員に絶賛されて、ぶっちぎりで決定したらしい。
確かに傑作である。しかも、普通の歴史小説の体裁をとっていて、なおかつファンタジーっぽい。ファンタジーっぽさが何かっていうのは、世代によって違いがあると思うのだが、われわれ30歳前後の読者にとっては、「ドラクエ」っぽさ、が一番近い。ドラクエっていうのは、要するに主人公が成長していくビルドゥングスロマンであって、また貴種流離譚である(ことが多い)。『後宮小説』はまさに主人公銀河が成長し、自らが貴種となっていく物語である(物語冒頭で銀河はのちの正妃であることが記される)。
全体としてはそういうこと。さて、いろいろなところで書かれているとおり、この小説で一番かっこいいのは書き出しのところである。
<腹上死であったと記載されている。>
だって。すごいですね。「トンネルを抜けると雪国」ではなくて、トンネルをくぐろうとしたら死んでしまった皇帝の逸話から物語が始まるのである。そしてこの物語は、トンネルをめぐる比喩で埋め尽くされている。この皇帝(腹宗だって(笑))は物語を紡ぐことはできなかったが、そもそも、小説というのはトンネルをくぐろうとするいろいろな努力から始まるものなのかもしれない。
とりあえず読んでみて?!! アニメが面白かったので原作が気になって読んでみたら、おもしろい!!
アニメではえがききれなかった部分が満載ですごく読み応えがありました。
まず出だしでビックリ!腹上死から始まるとは・・・・。 読み進めて行くと
本当にあった国のような錯覚さえしそうな位の作者の自信たっぷりの歴史描写。
最後まで衰えることなく書かれていたのがサイコーに良かったです。
とりあえず読んでみて?っと言いたいです。
清清しい大嘘ツキ ハードカバーの装丁がすごく綺麗で初版が出たときに衝動買いしました。
すごく面白くて一気に読み下し、その後も何回も何回も繰り返し読んで...
素乾国という国の後宮に入った銀河という名の一人の少女が主人公です。
もちろん架空の国家なのですが、物語は史実を基にして書いた小説という形で、
折に触れて歴史書や民間伝承からの引用が入り、一貫してその形式で進みます。
もちろん歴史書も伝承も架空(笑
最後には著者が、銀河ゆかりの地を訪ね
その地に現在もなお息づく銀河の伝承に出会う、
という締め方で、気持ちのいいペテンにあったという清清しい気持ちにさせてくれます。
そして、銀河のことが大好きになるのです。
心の底から、その後宮向きでない自由奔放な少女がかわいくて仕方なくなる。
もう、最後の方は感動して駄々泣きでした。
そして、何て気持ちのいいウソなんだ!と酒見賢一さんありがとうという気持ちに…(笑
こういう不思議な気持ちのいい読後感を持てる小説って他に出会ったこと無いなぁ...
大好きな一冊です。
モチーフではなくてテーマがファンタジー 後宮小説という題だから房事のテクニックがわんさかの
いやらしい小説かと思っていたが、違いました。
房事術を悪として認識するキャラを出していることからも判るが、
酒見先生の視点は、性行為をマンセーしてないので素晴しい。
直裁的な男女の行為の描写は全然ありません。
舞台が後宮なので、房事術の実践講義がくんずほつれつするが、
後宮の宮女に手を出していいのは皇帝だけなので、
宦官の男が男に攻められアヘアヘ言います。
女好きというよりも801好き用の本ですな。
中国によく似た架空の国を舞台にしているが、
国号が素乾という二文字であることから、
中国史に詳しい人には、架空の王朝だとすぐ判る仕組みになっております。
架空の歴史書を元に書かれた小説である。
歴史小説及び歴史小説家のパロディのような感じもする。
架空の歴史なのに元号年号も詳しく出てきて、
正史と野史の違いの考察もあったりして大笑い。
正史馬鹿はこの小説を読んで、
自分たちの歴史認識の滑稽さに気づいて欲しい。
私は嘘でも本当でも面白ければOKという主義です。
架空の歴史小説だが、面白いファンタジーとしてこの小説はOKである。
幻影達と書いてイリューダと読ませたり、
漢字なのに西洋風に発音する世界は魅力的である。
この架空世界の歴史をもっと知りたくなります。
中国対イタリアの戦争は外伝として書いてほしい。
10冊分ぐらいのネタが埋まっている豊潤な中華ファンタジーである。
世界観歴史観そのものがファンタジーであり、
ファンタスティックな超常現象は発生しないのもいい。
魔法使いなどというふざけた超能力者は出てきません。
剣がメインだが、火薬もあり、拳銃、鉄砲、大砲もある世界である。
野蛮な剣士達に女達が銃砲で武装して抵抗するクライマックスは、
もっと面白く書けたと思う。
時代遅れの忍者の忍法対最新科学の銃砲の戦いを突き詰めた
山田風太郎の「海鳴り忍法帖(市民兵ただ一人)」 を参考にしてほしかったざんす。
|
|
[ 文庫 ]
|
GOTH 夜の章 (角川文庫)
・乙一
【角川書店】
発売日: 2005-06-25
参考価格: 460 円(税込)
販売価格: 460 円(税込)
|
・乙一
|
カスタマー平均評価: 4
夜の闇に憩いを感じる心 二冊で一つの表紙のデザインが凝っている。黒い刃の、一本のナイフ。
登場人物の一人称で進められるため、物語の終わりで、犯人や被害者が推定した人物と違っていたこともある。
というか、私はだまされまくった。うーん。裏切り方が見事だ。
そこは面白いと思った。特に、「犬」はやられた。なんともいえない切なさに胸を突かれる。
とはいえ、乙一らしい、淡々として、感情の起伏の少ない文章であるが、解体された死体の描写などは苦手なので、☆は少なめ。
ここまで来れば…… グロテスクも、ここまで書けば立派なものだ。一応、今まで読んだ乙一の作品の中では最高かも。主人公の内面にも、まあこの程度に踏み込んでいれば十分であろう。中途半端に童話してたり、どこかに希望を残そうとした痕跡のあった作品よりは、こういう方が好みだ。
他の方のレビューを読んでみると、あとがき作家になりかけていて面白い。気持ちはわかるし、やったこともあるが、あとがきから読むのはやっぱり邪道です。
娯楽大作。 目を覆いたくなるような残忍な場面も映像・画像ではなく、文字として表現されると、直接的でない分、劣悪にならずに、気品ささえ感じる。
残酷で暗い色調の中にも、端々に華を感じるのは、作者の力量か。
読者にあっと言わせる物語の展開といい、すばらしい作品。
小説特有のトリック ◆「犬」
連続ペット誘拐事件が巷を賑わせていた。
そんな頃、ゴールデンレトリバーとその飼い主の少女と出会った“僕”は―。
おそらく、視覚化不可能な小説特有のトリックが
使われているため、コミカライズされなかった作品。
不安や恐怖、さまざまな抑圧された感情に追い詰められた
犯人の人物像はすぐれて現代的で痛ましく、胸に迫ってきます。
▼付記
ちなみに、本作での森野の出番は比較的少なめですが、
意外とベタな「弱点」が明かされ、萌えキャラっぷりを
ちゃっかりアピール…、と思いきや、しっかりと
「裏」があったのですね。
読み終えるのが惜しいとすら思いました。 とても乙一らしい作品で、魅力的です。
文章が非常に読みやすく、繊細な描写がとても綺麗です。
主人公の「僕」は、どこか人間的な感情の欠落した少年なのですが、残酷で無感動な彼の心情や心理に、不思議と「人間らしさ」を感じました。
ただ、作中グロテスクな表現も多いので、物語と現実を混同して考えてしまう方にはお勧めできません。
|
|
[ 文庫 ]
|
狐火ノ杜―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
・佐伯 泰英
【双葉社】
発売日: 2003-11
参考価格: 680 円(税込)
販売価格: 680 円(税込)
|
・佐伯 泰英
|
カスタマー平均評価: 0
|
|
[ 文庫 ]
|
神南署安積班 (ハルキ文庫)
・今野 敏
【角川春樹事務所】
発売日: 2001-12
参考価格: 672 円(税込)
販売価格: 672 円(税込)
|
・今野 敏
|
カスタマー平均評価: 4
最終三作のレベルで全体を通して欲しかった 「87分署シリーズ」型の刑事物にしては、「事件vs刑事達の人間模様」のうち、後者に圧倒的な比重が掛かった作品。事件解決の過程のサスペンスや事件関係者達の人間模様を敢えて軽視するからには、余程魅惑的な刑事の造形が必要となる。警察署を舞台にしたホームドラマの様相なのだから。
その候補の筆頭が、係長の安積だろう。作者としては安積を聖人として描きたいようだが、良心と公正さが取り柄の刑事が魅力的か否かは好みに依ると思う。それに次ぐのが、一見冴えない風貌だが、実は鋭い頭脳と"ツキ"を持つと言う設定の須田。しかし、その触れ込みの割には、須田が活躍する場面がなかったが、「ツキ」でようやく脚光を浴びた。須田の実直さと"ツキ"がロシア人暗殺者の逮捕に結び付くと言う爽快なストーリーで、事件と刑事のキャラクターのバランスが取れている。このレベルの作品を集めて貰えれば、全体の印象も向上したと思う。安積と同期で、交通課の武闘派の速水、杓子定規で憎まれ役の村雨、若さと体力でヤル気が漲る黒木、更に新米で村雨に抑圧されているが、上昇志向の強い桜井。彼等の設定は類型的で、余程考えたストーリーを創ってあげないと彼等の個性が埋没してしまう(速水だけは、その性格で目立っているが)。その中で、「部下」は安積-村雨-桜井の職制間の絆、異動話に心が揺れる安積、放火事件における村雨、桜井コンビの活躍を巧みに絡めた秀作。最終作「シンボル」も洒脱な出来。
結局、最終三作の出来が良く映った。作者も次第に登場人物を操れるようになったと言う事か。多分、シリーズになると思われるので、刑事のキャラクターと事件の係りを巧く描いた作品を期待したい。
刑事達の様々な一面が見られます 湾岸署の縮小に伴い、神南署に異動してきた安積班の面々。
今作品は超短編集なので、サクサク読めます。
事件そのものよりも刑事達の様々な一面が見られます。
黒木の生真面目さや桜井の若者らしい焦りや、須田の強運振りや
村雨の桜井に対する思いや、今回も見られる速水のカッコ良さや、
新聞記者達のやり取りや、そして安積の部下達に対する思い入れ
などなど。
いつになくコミカルタッチで、思わずクスリとさせられる場面も
しばしばあります。
ちょっと切なくなる話もあり、色んな話てんこ盛りで楽しめる一冊。
みんないい味出してます 安積シリーズの短編集。
ベイエリア分署は計画が頓挫し、この本では神南署に異動していますが、安積班のメンツは相変わらず。
敏捷なアスリートのような黒木、太っちょでパソコンおたくの須田、神経質で型にはまったタイプの村雨、村雨に教育されて個性を失いつつある若手の桜井・・・。
おなじみ、交通課の速水係長も活躍します。
このシリーズの魅力は、事件の謎よりも、むしろ個性的な刑事たちの内面にスポットを当てていること。
「異動」は、新聞記者の他愛のない人事異動のうわさ話を聞いた刑事が、「自分は評価されてないのではないか。安積班から異動させられるのではないか」と悩み、アピールしようと無謀な行動に出る話。
「夜回り」は、部下が美人記者と一緒にいるところを目撃され、その後その美人記者がスクープ記事を書く。主人公の安積は情報を漏らしたのが部下ではないか、と思い悩む・・・。
話ごとに主人公が変わり、それぞれのキャラの魅力が際だつ作りになっています。
噛めば噛むほど味の出るスルメのようなこのシリーズ。
派手さはないですが、刑事小説好きにはオススメです。
『刑事』という名の男達の物語 東京ベイエリア分署から神南署に移動した、安積強行班係の面々の短編集。お馴染みの面々の日常…はやはり、刑事である以上、事件を追っている訳ですが。その一つ一つが、どれも違う顔を見せています。強行班メンバーの一人をメインにしたモノもあれば、全員で事件を追うモノ、また、普通の事件とはちょっと違う趣のモノなど、1冊で何倍も美味しい1冊です。
安積警部補ファンの人は勿論、初めて安積警部補シリーズを読まれる方にも、是非、お奨めする1冊です。
|
|
[ 文庫 ]
|
あかね空 (文春文庫)
・山本 一力
【文藝春秋】
発売日: 2004-09
参考価格: 660 円(税込)
販売価格: 660 円(税込)
|
・山本 一力
|
カスタマー平均評価: 4.5
時代家族小説、世話物ですね 直木賞受賞作。時代劇にもかかわらず大変読みやすく、あっという間に読了。
善人と悪人がはっきりしすぎなのでは? そのせいかするすると話は進んでいきます。
家族の物語りとして、大変面白く感じました。
しかし、二部は不要なのでは?
いい話 京風の豆腐をひっさげて、江戸で店を構えた永吉とその妻おふみとその家族の波乱万丈の物語(時間でいえば五十年ほどに渡る)。江戸とは違う京豆腐が受け入れられるまでの苦心と成功の話でもあるが、それだけではない。家庭内での行き違いやトラブルがありつつも、家族が一緒に協力してやっていく様子も作品の一つの柱となっている。前半は永吉一家の成功を祈りながら割と気分よく読めるのだが、家庭の問題が積み重なる後半はどうしてもやや沈鬱な気分になるわけだが、それはおもしろさを阻害するものではない。むしろ単純なハッピーエンドに終わらせない意気込みを感じる。描写においては、作中人物の目線やちょっとした仕草を、最近みたことないくらいに丁寧に(とはいえくどくならない程度に)書いており、かなり映像に近いものとして頭に浮かんでくる。個人的にはそれがちょっとした特徴として気に入った。
気持ちのいい読後感 安心していい小説が読みたくて、手に取った小説。
期待通りでスッキリと読めました。
中盤から、いろんな事がうまくいかない、
伝えたい事が伝わらないことで、
もどかしさを感じつつ、
最後は気持ちよくまとめるのは、さすがです。
残念だったのは、
永吉、おふみがもうちょっと浮かばれてほしかった。
時代物なので読みづらいと思いきや、
とても気持ちよく頭に入ってくる文体で、
あいかわらずいい読後感が味わえます。
後半は読む楽しさが半減した 前半と後半で評価を分けたい。前半が星5つ、後半は星3つかな。
まず前半。
京から江戸に上って来て豆腐屋を開業する永吉と、その妻となるおふみを中心に物語が展開するのだが、その展開が一本筋で、とても読みやすい。
くどくどした説明文がほとんどなく、実に刻々と素直な時間経過で、流れるように話が進んで行く。
だらだらした文体ではなく、エピソードの一つ一つが小気味よく語られるのも話の展開が速い理由だろう。
ふたりを取り巻く家族や近所の人間関係もさわやかで、ほのぼのとしたホームドラマを見ているように、気持ちよく読み進めることができる。
それから後半。
永吉とおふみに子供ができたあたりから、ちょっと展開が変わって来る。
話の展開を遮るように、夫婦や子供たちの個人の視点で回顧が繰り返され、これまでの出来事に対するそれぞれの視点からの事実が語られるのである。
明るくはきはきした娘だったおふみが、ゆがんだ性格の中年として描かれて行く(それは表面上でのことなのだが)ため、ゆったりとした気持ちで読み進めない。
できれば、周りの隠された好意や悪意が、当事者たちにすっきりと分かって大団円となれば読後感も良いのだけど、
それを知らないまま当時者が死んでしまい、小説の中だけで事実が語られてもなんだかなぁ、とも思う。
親子二代、30年間の物語だし、読む者だけがすべてを分かればそれでいいのでしょう。
泣いちゃいました☆ 山本一力さんの本は初読でした^^
凄くいい作品だと思います。
自分の店を守り繁栄させていくという事の裏にある家族の問題であったり絆であったり・・・
他人の気持ちであったり、情であったり・・・
小説のなかの登場人物たちが本の中で強く生きている作品だと思います。
家族同士の犯罪や殺人の報道が絶えない今の次代にこの小説に出会えた事を嬉しく思います。
感動と人情が沢山つまった粋な作品でした^^
|
|
[ 新書 ]
|
デコイ 迷鳥 (SHYノベルス)
・英田 サキ
【大洋図書】
発売日: 2008-09-05
参考価格: 903 円(税込)
販売価格: 903 円(税込)
|
・英田 サキ ・奈良 千春
|
カスタマー平均評価: 5
期待以上でした! 英田さんの代表作「エス」シリーズのスピンオフです。
「エス」に出てきた人物もちょこちょこ出てきます。
くらいの軽い気持ちで読み始めたのですが、止まらない止まらない。
BL的には、謎の長髪美形×記憶喪失の男、ヤクザ(部下)×ヤクザ(上司)
の2カプ同時進行でストーリーが進むのですが、
萌えを感じる余裕もないままぐいぐいハードな世界観に引き込まれます。
主人公のひとりである記憶喪失の男目線で話が進むので、彼が感じている不安や怯え、
恐怖などが読み手にひしひしと伝わってきます。いやあ怖かった。
そして張り巡らされた伏線が、ラストに向けて収束していくときの
カタルシスといったらもう。
読後しばらく放心状態でした。
思いもよらない展開にハラハラし、大人の恋愛の駆け引きに萌え萌えし、
ほほえましいシーンでは心が温かくなったりと、存分に振り回されまくりました。
4人の男の人生にガッツリ付き合った気分です。
久々に「読書の楽しみ」を味わえた本でした。
力作! 二組のカップルのお話を交互に、過去と現在を織り交ぜて描いて、いろいろなことに配慮の行き届いた構成だった。ところどころに魅力的な人物が配置してあって、スピンオフの期待が高まる。欲を言えばもう少しひたって味わえる余裕が欲しかったかも。それはやっぱり一本のラインをずっと追っていく場合と違って細切れになってしまうから。そのかわり中身がぎゅっと詰まっていて読み応えがあった。中表紙の子供たちはそれぞれ大事なものを見つけたのだろう。
ところで、私は佐藤さん(偽名)が大好きです。ずっとこういう役回りなのかなあ。それもかわいそうだなあ。佐藤さんにもいつか幸せになってほしいです。
お腹いっぱい 久々の英田さん、奈良さんコンビということで、期待しすぎてハズすかなと思ったんですが、とても面白かったです。お腹いっぱいです。BL+記憶喪失やら爆破事件やらと、一つだけでも重たい事柄を、しっかり上下巻でまとめてくるのは流石だなと思います。いろんな人の死が絡むので、二組(特に火野×安見)の今後には複雑な思いが湧いてきます。とりあえず男でも女でもいいから、誰か佐藤さんを幸せにしてあげて!
構成の妙 英田さんの「エス」「DEADLOCK」シリーズは、いずれも警察と犯罪社会を描いたBLでは抜きん出た作品だと思いますが、所々で会話に不自然さを感じたり、世界観を語る部分が説明的すぎたり……と、私個人的には多少引っ掛かりがありました。が、この「デコイ」にはそれらが全く感じられず、二組のカップルの過去と現在を様々な伏線をからめつつ、実に上手く描ききっていると思います。典型的なハッピーエンドではありませんし甘々シーンは殆ど無いので、全編硬質で緊迫感のあるストーリー。ちょっと言い過ぎかも、だけど、初期の高村薫さんの小説を彷彿とさせました。奈良千春さんとの相性は抜群で、イラストの重要性を改めて再認識しました。上下巻の表紙とも美しい!青と赤の対比が素敵ですよね。
秀逸 上巻で絡み合った糸を解きほぐしながらラストへ向かって一気に物語は進みます。読者に立ち止まらせない勢いのあるストーリー展開、ややもすれば都合良すぎる設定と思ってしまう登場人物達の過去や話の展開も疑問に思わず読みきってしまいました。勧善懲悪ではない、空虚さや、哀しみを抱えてそれでも生きる登場人物達の描写がいいです。最後、ストーリートチルドレンや児童虐待の記述が説明文的でやや、冗長でした。重要な社会問題ですが、小説としては淡々と書ききってしまった方がすっきりしたかもしれません。なんにせよ、上巻を読んだその日に下巻を買いに行ってしまいました。良作。
|
|
[ 文庫 ]
|
歳月〈上〉 (講談社文庫)
・司馬 遼太郎
【講談社】
発売日: 2005-02
参考価格: 750 円(税込)
販売価格: 750 円(税込)
|
・司馬 遼太郎
|
カスタマー平均評価: 5
癖のある人間でも成功できるもんだな 江藤新平というかなり癖のある男の話
客観的に見ると、ばかだなぁとおもうけど、でも、実際自分が
この世界に入り、彼と同じものを見るとこうなってしまうんだろうなぁと思う。
そういう意味では、人間やはり、地面にはいつくばって
目の前の現実に縛られて生きているんだなぁと思い知らされる。
あまり感情移入しやすいタイプの主人公ではないが
一人の男として、こういうやつもかっこいいなぁとおもえる。
自分の周りにいた、ただむかつくだけのやつも認められるようになる
そんな本だった
近代国家草創期の俊英 世に西郷隆盛、大久保利通を評価する声は多く、よほどのことがない限り彼らの名を知らぬ人はあるまい。しかし、彼らとともに明治政府の足がかりを築いた「江藤新平」を評価する声はいかにも弱い。幕末維新史に関心を示す者ならいざ知らず、一般の人間に江藤の名を問うても、存じないか聞いたことがあるという程度の反応。佐賀の乱の首謀者だった人、と言ってもらえれば御の字といったありさまである。
本書はその「江藤新平」を描いた小説である。
司法権の独立を言い、人権定立を主張し、日本はよろしく法治国家たるべきであると説く。当時の太政官にこれほどまでにたくましい国家構想を持った政治家はなく、まさに「稀代の」と呼ぶにふさわしい人物であった。
だが彼はその構想を完成させることなく、政敵大久保利通に破れ、乱に巻き込まれ、そして無惨にも刑死した。司馬氏はこの小説の中で江藤のそういう惨めな死を深く考察し、観察し、透明な視点で彼を描き上げている。「江藤新平」の人となりがありありと伝わって来、もちろん物語としても面白いが、歴史に興味を持って考えるきっかけにも充分なりうる名著である。
非業の死を遂げた歴史上の人物は数あれど、どんなにか「あそこで死んでいなければ…」「あとこの点が彼に備わっていれば…」と強く思わせる人物は多くはない。読了後の感想は人それぞれと思うが、おそらくはそうした期待を込めた、でもかなわぬというやるせない思いを感じさせる人物だと言える。
江藤を扱った本はいくつかあるが、純粋におすすめできる第一の書はこれ以外にない。司馬氏と明治に関心があるのなら、『翔ぶが如く』の前にこの『歳月』の一読をおすすめする。
国策裁判 おそらくこれが維新後初の国策捜査の国策裁判の国策死刑か。
三権分立って、中学の教科書に書いてあってさも当然に守られているようですが、どれだけ守ることが難しいものなのかは、それが当然でないことの方がほとんどであることを思い致せばすぐわかる。
国策捜査があると周知に至った今こそ読まれる書物かもしれません。
今も昔も行政強すぎ。
司馬作品 …ほとんどに云える事ですが、血沸き肉踊ります。
作品としてはレヴューの数が物語るように、地味なのかも知れません。
主人公がこの国の司法制度を築いた最初の官僚(…と云っても言い過ぎではないでしょう)の話ですから。
ですが、あなどるなかれ!
かつてはこの国の官僚もこれ程までに『男』であったか!と感動できます。
己の仕事に己の信念を貫き、それが己の地位保身の為ではないが故に斃れて行く。
これは史実を元にしたフィクション(小説)である、と判ってはいてもやはり感動します。
江藤の姿をこの小説で思い描いた後、現代の政治家や官僚を眺めると…なんともトホホとなります。
私利私欲のない、純粋な急進改革派・江藤新平卿を知って欲しい。 今年度の夏の甲子園大会、全国高等学校野球選手権大会で見事優勝した「佐
賀県」出身の江藤新平卿の話です。好きだなあ、こういう不器用な人。
幕末は、わずかな志士活動だけで脱藩の罪となり、長い間、囚われの身とな
り、暗い世界で過す罪人から、明治維新で世の中が一変し、解き放たれ、明治
政府に出仕するや、眩いばかりの明るい世界に出て、今までの失われた時、「
歳月」を取り戻すかのように、昼夜、馬車馬のように働く司法卿・江藤新平卿
。
「さ、裁判長! 私は..。」
人一倍、社会正義に燃え、人権を重んじ、人一倍弁論がたつにもかかわらず
、自分自身の事には一言の弁明も許されずに、佐賀の乱の首謀者として、官史
に強引に処刑台に引っ立てられて行く新平卿。
自分自身の作った裁判所制度の公正さを信じ、静粛に裁判に望むのだが、
裁判長が政敵・大久保利通に買収されいることも知らず、こういう形で大久保
がねじ曲げた不正な裁判・判決にも従っていかざるを得ない新平卿。そういう
ラストにつながる、うかつさも、新平卿の人間らしい所なのです。人権を重ん
じる憲法が無かった時代のお話です。
彼は頭が、良すぎるのです。学問の素質があり、明晰な頭脳があるからこそ
、周りがバカに見える。時代を先取りした「人権」を重んじた先進性がある。
「万民平等」の感覚があるからこそ、礼儀作法を身に着ける必要性も感じなか
った。その礼儀知らずさが、周りの感情を悪化させて、敵を作ってしまうので
す。
純粋で、自己の思想に忠実な人。決して、私利私欲の人ではない。
「万民平等」の思想があるから、薩長の独占政権も許せないし、薩長の汚職事
件も「法の下の平等」の理念のもと、薩長だからという理由で、ねじ曲げて
特別扱いすることはしない。ある意味、職務に忠実な、融通性のない、頑固な人。
参議の閣議で議論するにしても、思想に忠実なため、相手がどなた様であろう
とも、本人は維新第四等の佐賀勢では強く言える立場ではないが、自分の立場を
顧みず、遠慮無く、理屈で、相手をやりこめようとする。
そのことがまた、周りの感情を悪化させて、薩長を分断し、内部から破壊す
る反逆者のように思われる、誤解される大もとのもと。
薩摩だ、長州だという藩閥意識、枠、利害を超えたもっと広い概念の「国民」
全体の福祉を考えた人。
また、自分自身の弁に自信があるからこそ、彼は自分が正論を吐けば、人を
説得でき、人が動くと思っている。佐賀が暴発しそうだと聞けば、自分の弁で
説得・鎮圧できると彼は思う。そう思って佐賀に向かう。
結果は大久保の権謀に落ちて、乱の首謀者に祭り上げられてしまう。
反乱軍が負けそうになると、今度は軍を抜け出して彼は薩摩の西郷に、土佐
の連中に協力を仰ぎに、説得するために会いに行く。そういう、うかつさも、
これまた、新平卿の人間らしい所なのです。
そういう人間らしさを司馬さんは、愛するまなざしで見つめているのです。
|
|
[ 文庫 ]
|
センセイの鞄 (文春文庫)
・川上 弘美
【文藝春秋】
発売日: 2004-09-03
参考価格: 560 円(税込)
販売価格: 560 円(税込)
|
・川上 弘美
|
カスタマー平均評価: 4.5
遺していく人と、遺される人 いつもどこかしら外界との違和を抱いている未婚の「わたし」と、そんな「わたし」が偶然再
会した、辛うじて覚えているほどの高校の教師「センセイ」との、ゆったりした交流を描く小
説。
この小説で、「わたし」と「センセイ」の関係の象徴とも言える、2人がいつも立ち返る「場」とは、
2人いきつけの(かといって2人がそこをいきつけにしているのは単なる偶然だったのだけれど
も)居酒屋である。
そこで彼らはいつも、対面する席には座らない。いつも、向かい合うことはしないカウンター
で酒の肴をつつく。それが、この小説の2人の関係性を象徴しているような気がする。面と向か
い合うのは、教師―学生の関係性の所作だ。そうではなく、どこかしらまだ「わたし」を学生
扱いして押しつけがましいセンセイと、そんなセンセイの押しつけがましさを表面的には鬱陶
しがりながらも(面とは向かい合わずに)、でもなぜか離れることのできない(晩酌を相席を
してしまう)「わたし」というのは、一言では語ることのできない何かでつながっているのだ。
小説はそういった2人の、急がない、焦らない日々の積み重ねなのだけれど、その結末に
おいて僕は少し驚いてしまった谷崎潤一郎賞受賞作。
泣きたくなる。。。 「センセイ」「ツキコさん」名前を呼び合う二人の空気が、とても甘く、ゆったりとながれます。でも、お互いに求め合おうとするココロのざわめきが詰まった会話です。
20年ぶりに再会したセンセイと私、飲み友達からだんだんとお互いを必要になっていく気持ちの流れが、淡々と書かれています。
でもそれは大人の恋愛だから。
30代後半のツキコと30ちょっと年齢が上のセンセイの愛は、自然にはぐくまれ、気がつくとお互いがお互いを欲しています。
年齢的に必ずぶつかるであろう、性への不安も、初めて結ばれた時の激しさも、短い言葉で端的に表現しています。
そして、現実世界での永遠の別れ。
「センセイにすっかり馴染む前に、センセイがどこかに行ってしまったことを思い知って、泣けたのだ」
恋の切なさをしみじみと感じて、泣きたい気持ちになる小説でした。
最後は自然と涙が流れてきました。 川上弘美の作品は、いくつか読んできました。
「物語が、始まる」「蛇を踏む」「消える」・・正直どの作品も難解で意図が全く分からず、
最後はいつも疑問ばかりが残っていました。
けれども、今回この作品を読んで強い感情移入はなかったものの、ツキコとセンセイのやりとりには心が和むような、ずごくじれったいような・・でも最後は自然と涙が流れてきました。元妻への思いがあったからツキコを突き放していた(心を閉ざしていた)けれども、最後はツキコに心を開き、不器用ながら一生懸命愛情表現するセンセイが可愛いと思いました。
センセイは、若い女性を成長させてくれるような、存在。 センセイと教え子・ツキコが、いきつけの飲み屋さんでであった。キノコ採りにでかけたり、花見にいったり、飲み屋をはしごするなど坦々と物語は進む。時折登場するおつまみは、どれもとてもおいしそうで、二人に絶妙な温感を与えてくれる。
時たまジャイアンツをネタにケンカしたり、客に絡まれたりと、トラブルが発生するものの、センセイの知恵と機転がきいていて、いつもオトナの付き合い方をしているところが、読んでいてとても心地よい。でもセンセイには、子供っぽく、むくれたりする所があり可愛らしかったりする。
20代では無理かもしれない感傷部分の描写が上手くて、みるみるセンセイに惹きこまれてしまった。いつか、この人を失ってしまうのではないかと漠然とした不安感を抱きつつ物語は進む。
国語のセンセイとだけあって、物語に登場する口語は丁寧で風情がある。四季を通じてツキコとの付き合いには細かい配慮があり、深い情愛が感じられる。一定の距離をお互いに保ちつつ、相手を思いやる所がとてもきれい。面倒な駆け引きなんてしない、ただその人がいるだけで心は平和、そんな関係性にとても憧れてしまう。最後まで心地よく癒される小説だった。
印象の薄いセンセイを、よく考えると、ビミョ?な人 正直読んでる間ずっと退屈でした。食べ物の話がとっても多いね。でもってこの著者はこの手のものでもシュール系なんですね。結局やっぱり恋愛って年取っても欲と結びついてるだけなんだなとか思ってしまった作品。それ以上のものは特に何も。美しい恋愛はもはや恋愛じゃないんだったっけ・・でもそんなこと微塵も感じない恋愛ものもいっぱいありますから・。所々古臭いなーと感じる言い回しなどありました。
|
|
[ 文庫 ]
|
ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 (新潮文庫)
・塩野 七生
【新潮社】
発売日: 2004-08-30
参考価格: 500 円(税込)
販売価格: 500 円(税込)
|
・塩野 七生
|
カスタマー平均評価: 5
退屈を知らない英雄 ユリウス・カエサルの壮年前期(前半)を描いた中巻。
(40?50歳まで。)
紀元前60年?紀元前54年までの出来事。
--
ガリア(現フランス人)戦役。
カエサル大活躍。
ドーヴァー海峡渡ってブリタニア(イギリス)まで
戦線を広げる。
--
フランスの土地を縦横無尽に駆け回り。
あっちゃっこっちゃで勝利・勝利・勝利。
戦場に至っては自らが戦場を駆け回り。
部下の兵士を鼓舞。
--
なんというか、文句のつけ様が無い。
文句のつけ様が無いから。
勝利に次ぐ勝利だから。
なんというか。
英雄であることが。
勝利が。
当たり前になる。
そこがこの巻の欠点と云えば欠点にあたると
思うのだけれど。
当たり前になるということは
退屈するということに繋がると思うのだけれど。
それでもなお、面白い。
読むにつれて塩野氏の考えも見えてきた 通勤電車の中で少しずつ読み続けて4ヵ月、やっと第12巻まで読み終えたが、最初は
カエサルだけで何冊もページを割く意味が理解できなかった。
しかし、塩野氏にとって停滞していた政治システムを変えるために出てきたという歴
史的意義と、目標遂行のために硬軟とりまぜた柔軟な対応で進めるカエサルの人間的
魅力が同時に描かれていて、すっかり引き込まれてしまった。
大半がガリア戦記に充てられるこの巻では、淡々とガリアでの戦が描かれているが、
読んでいても決して飽きることはない。繰り返し出てくる記述(たとえば主戦力の非
戦力化)などの戦法の説明も、すっかり私の頭の中に入ってしまっていっぱしの戦史
評論家気取りだ(笑)
また、ガリア人の気質とローマ人の気質の違いを考えると、今のヨーロッパ社会の
複雑さの根底を見る思いがする。同じイタリアでも北イタリアと南イタリアが違うと
地理で習った記憶があるが、「ローマ人の物語」を読んでそれがようやく理解できた
気がする。
ガリア戦記を分かりやすく叙述 40歳にしてようやく「起った」カエサルが、ローマ国境をはるかに越え、ガリア人の広大な土地(西はスペイン・イギリスから東はドイツ国境まで)の平定に乗り出します。
本巻のほとんどは、カエサル本人の著になる「ガリア戦記」をもとにしていて、章立ても戦役の1年ごとにまとめられています。私は原典(訳本)を読んでいませんが、毎年の戦役の様子がドラマチックに描写され、一気に読み進みました。
様々な部族で構成されるガリアの土地を、キャラクターの異なる部下を適材適所に使い、同時進行的に多方面で戦いを展開するさまは、まるで日本の戦国時代を思わせ、司馬「国盗り物語」を彷彿とさせます。
塩野氏は、カエサルの文章力を絶賛し、ガリア戦記を忠実に再現しているようですが、そこまで書かれたら「ガリア戦記」を読みたくなってしまいます。
とにかく、わくわくして読める一冊です。
執政官就任からガリア戦役の5年目まで この巻では、カエサル・グラックス・ポンペイウスの三頭政治の密約が交わされてカエサルが執政官(コンスル)に就任する1年前の紀元前60年から、前執政官としてガリア属州総督に就任してガリア戦役も5年目となる紀元前54年までの期間が扱われている。
読後の感想として次の4点が印象に残った。
第一に、カエサルは「情報」の重要性を認識し、徹底的にその利用を図ったことである。情報が価値を持つのは「古代」においても同じであった。むしろ、情報入手の手段が限られているだけあって現代以上に重要な意味を持つ場合も多かった。彼は、元老院の会議録を公開して市民の批判に曝すようにしたり、政治や戦場における敵に関するさまざまな情報を集め適切に対応した。
第二に、カエサルの用意が周到で鮮やかであることである。農地法を通すためには執政官となる必要があり、そのためには政治的な足場を固めておく必要がある。その足場を固めるために、仇敵関係にあったポンペイウスとグラックスを秘密裏に味方に引き込むなどはその最たるものであった。この政治上における用意周到さは、戦場においても遺憾なく発揮された。
第三に、カエサルの知的好奇心が非常に高いことである。著者の塩野さんがたびたびに渡って指摘していることだが、カエサルの『ガリア戦記』には敵となったガリアの諸民族やゲルマン、ブリタニアの文化、風俗、宗教、家族、教育、環境などのことに関する記載が豊富だ。これらの情報は、敵方に関する情報収集の一環として集められたものと思われ、その意味では第一の点と関連するが、「どのような」情報を集めるかということについては収集する側の個性が出てくると思う。
第四に、どんな逆境におかれても、カエサルは弱音を吐かなかったことである。意思の力の強さを思わずにはいられなかった。
同業者としてのカエサル カエサルのガリア戦記を ゆっくりと塩野がなぞるのが本書である。
戦記としての本巻の白眉は 英国上陸にあると思う。実際にローマ人で 英国まで攻め入ったのは カエサルが初めてだ。わざわざ海を隔てた国を目指したカエサルの覇気というべきか。チャーチルほどの人ですら このカエサルの侵略をもってして英国の歴史が始まったとすら言ったというのだから。
但し 読み物としての本巻の白眉は「ガリア戦記」というカエサル自身の著作への塩野の取り扱いにある。
塩野は キケロと小林秀雄の「ガリア戦記評」を 本巻で紹介している。キケロと小林秀雄にして 絶賛しているカエサルの著作について 塩野はすっぱりと言っている。
「私の書こうと試みているのは カエサルという人間である。そして 人間の肉声は その人のものする文章に表れる」
こういう事を喝破されてしまうと このレビューからして 我ながら読み直してしまうほどだ。
塩野はカエサルへの片思いで本巻を書いている。塩野は カエサルのやったことではなく カエサルという「人間」を書きたいと言っている。これは もはや愛の告白ではないか。そんな 塩野が 著述家としての同業者である ガリア戦記の著者カエサルを見つめている姿が見えてくるようではないか。
|
|
[ 文庫 ]
|
プリズンホテル〈1〉夏 (集英社文庫)
・浅田 次郎
【集英社】
発売日: 2001-06
参考価格: 580 円(税込)
販売価格: 580 円(税込)
|
・浅田 次郎
|
カスタマー平均評価: 4
素晴らしい着想、ただ悪いクセというか マル暴の皆さん御用達のホテルとは、まさに当を得ている。
これ本当に作ったら相当はやる気がしますねぇ。
話のテンポといい、挿話的なエピソードもよく、とても面白く楽しく読めました。
ただ、最近の作品に何となく感じることなんだけど、多分に映画チックというか、いかにも映画原作になりそうな感じがちょっとあざといような。。。
さらに、浅田の悪いクセというか(そこがいいというフアンの方もいらっしゃるのでしょうが)、幻想的な、オカルティックな話に入っていく。
うーん、どうもそこらのどたばたのような、お涙のような、しかも霊的というところがちょっと僕は苦手。
全体には楽しかったですが。
これ、2,3と続くそうなんだけど、この後の巻でもやっぱ霊的な話あるのかなぁ。。。ちょっと心配。
今更レビューもなんですが・・・。 何年か前、初めての浅田作品との出会いがこの作品だった。
今から思えば、いきなり濃い出会いだった。
これほど、一気にシリーズ4冊を読んだ本も珍しい。
一癖、二癖どころではない登場人物達、笑いながら泣ける
というのはこのことだったのかと体験した小説だった。
その後、いつも目にとまるところに置きながらまた一気に
4冊読んでしまう事を考え、なんとなく手にしなかったけれど、
どこにも旅行に行けなかったので、プリズンホテルに旅行する
ことを思いついた。
訪れると、以前と変わらぬ人物たちがそこにいて、久しぶりに
温泉につかって帰ってきたようなそんな気分で読み終えた。
人情(刃傷?)沙汰も相変わらず。私にとっては、普通の
ホテルより、これくらい刺激がある方が脳が溶けなくて
いいかもしれない。楽しめました。
痛快 小説 ・・・ 展開がコロコロ変わりながらも、この小説の言いたい本筋にはブレがなく、痛快だ。
少々、主人公?の小説家が連れと義母に暴力を振るう部分は納得できない程、不自然な感じはするが、小説家の歪んだ気持ちをより際立たせるための演出と思えば、よいのでは?
三谷幸喜 の脚本を読んでいるような、アップテンポの流れがとても楽しかった。
浅田次郎の本はすでに10冊は読んでいるが、私としては、上位に食い込む楽しい小説だった。
浅田次郎 自分自身の経験がかなり入り込んでいるようである。
主人公の小説家と同様、浅田次郎本人も気難しい人なのだろうか?
どこまで、この主人公と浅田がダブっているのか、この点について、興味がわいてしまった。
悔しいけど面白いのである。 面白いです。文句なしに。
しかし、やはりヤクザ礼賛的なものはよくない。
ピカレスクという分野があるというのも理解できるが、それが傍流の傍流でない日本で記すということは罪なのではないかと考える。
なので標準よりも星ひとつ減。
現代座社会においては、ヤクザは義理、任侠ではない。そういう側面もあるだろうが、それはごく一部。大部分は、弱者をなぶったり。障害者補助の不正受給など、フリーライダーてき側面が多いのではないか。みなが、まじめにやっているところを逆張りするから食っていけるのだ。社会のフリーライダーを助長すべきではない。
しかし、悔しいけど面白いのである。
小説家さえいなければ。 マンガを読んでいるかのように、吹き出したりクスクス笑ったりしながら読める作品。
・・・ではあるが、あの小説家さえ登場しなければ、もっと気分よく読めただろうと思う。
とはいっても、彼が主役に近いわけだが。
その気分の悪さは、作者の「いやな奴の描写が見事すぎるから」という部分から来るものでは決してない。
奴隷女を殴る蹴る引きずりまわすの暴力男を、どこまでも肯定して書いてある姿勢に胸が悪くなるのだ。愛情の裏返しだの愛情に飢えているからだの・・・
小説家が登場するたびに気分が萎える。
|
|