内容は、地形と歴史と地元の人々との会話を軸としたいつもながらの楽しくためになる紀行文であるが、見た物、聞いた物の描写が格別にすばらしい。得意の列車よりもバスの車窓の方が美しかったのではないかと思わせるほどだ。樹々の緑や動物の鳴き声、波や風の音、空の色や谷の深さなどがあざやかに表現されている。読んでいると、いつの間にかバスに揺られている心地になってくる。地味な路線バスも見方によっては何とおもしろいものかと感心した。
この話は昭和末期のことなので、すでに十五年以上が過ぎている。ローカルバスも風景もずいぶんと様変わりしたことだろう。当時を知る恰好の読み物でもある。 鉄道旅行作家のバス旅行記もマル鉄道旅行家として有名な著者がバス旅行に挑戦。しかし、いつも通り結構楽しめます。著者の旅行記が読ませるのは、鉄道に関する知識だけではなく、旅に行くまでの準備の説明に始まり、旅行中の素朴な会話、丁寧な風景描写など旅行記としての基本的な部分がしっかりしているからだということがわかります。
行き先は、北海道神恵内村、同別海町、同豊頃町、青森県脇野沢村、秋田県森吉町、岩手県宮古市、山形県大蔵村、栃木県黒羽町、茨城県桜川村、新潟県上川村、山梨県上野原町、長野県上村、岐阜県小坂町、石川県能登島町、三重県宮川村、京都府美山町、岡山県成羽町、島根県島根町、広島県倉橋町、高知県本川村、宮崎県南郷村、鹿児島県笠沙町、沖縄県国頭村。
中でも室橋さんのエッセイが、独特の口調で、2、3行読んだだけで、すぐに引きつけられてしまいます。
そんな「筋金入り」の室橋さんでさえ、インドで何度も赤痢にかかったらしい・・・
いくら「旅慣れ」していても、気のゆるみは危険なんだな・・・と、考えさせられました。