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[ 新書 ]
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ハプスブルク家 (講談社現代新書)
・江村 洋
【講談社】
発売日: 1990-08
参考価格: 777 円(税込)
販売価格: 777 円(税込)
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・江村 洋
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カスタマー平均評価: 4.5
コンパクトな入門書 中世・ルネサンス・近代の各時代の歴史を覗くと必ず目にする王家がある。ハプスブルク家である。11世紀に歴史舞台に登場してから20世紀初頭の第一次世界大戦まで存続した、ある意味でヨーロッパの屋台骨とも言える一族だ。
20世紀の中欧・東欧が辿った苦難の歴史は、ある意味で民族自決の熱意が暴走してハプスブルク家を滅ぼしたことによる因果とも言える。小民族はある程度まとまって外敵に立ち向かわなければ、古くはオスマントルコ、近代ではプロイセン、ソ連、ロシア、ドイツ等の強国に良いように蹂躙されるのみである。
本書はハプスブルク家の勃興から絶頂期、ハンガリー帝国として最期を迎えるまでを非常にコンパクトにまとめた入門書とも言える。欧州史の理解に大いに役に立つと思える。
今宵、命の母をあなたに! 本書は1990年に初版が出て既にロングセラーとなっている名著であるが、私は本書を読む直前に2008年8月に出た中野京子の「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」を読んでいた。順序的には逆であるが、私は中野の絵画を使ったこの名家の栄枯盛衰物語をとても楽しく読んだ反面、もっと詳しく知りたいと思い、本書を読むに至った次第である。
中野のものは絵画の解説を中心におくため、細かな歴史的背景は省略されているが、概略をこれで把握しておいたので、本書にはとても素直に入り込むことができた。
本書は、ハプスブルクの稀有な人物のうち、”最後の騎士”と謳われたマクシミリアン一世、スペイン系とオーストリア系のハプスブルク家により文字通り”太陽の没することなき大帝国”を樹立したカール五世、オーストリアの”命の母”マリア・テレジア女帝、そして”ラスト・エンペラー”フランツ・ヨーゼフの4人を中心に約7世紀にも及ぶ王朝絵巻を描いている。
同じハプスブルク家を描写するにしても、書き手によってここまで印象が違ものかと思うほど、中野と江村では書き振りが違っている。これを比較しつつ読むのも面白い。中野はマリー大好き人間なのだが、江村はむしろ彼女のおっかさん、”命の母”マリア・テレジアにぞっこんのようだ。オーストリア継承戦争と続く7年戦争での列強に対しての支援要請等の獅子奮迅振り、国内改革業務の大胆さ、さらにその人となりに加えて母としての女帝ぶりまで、延々とこれでもかこれでもかと書いている、やれやれ、やれやれ、マザコン、マザコン・・・・・。
とはいえ、本書はアマチュア歴史ファンにとって、ハプスブルク家の概略を知るためには極めて読みやすい好著であると思う。
しかし、しつこいようだが、これから読むなら、まず中野の前著を読んでからのほうがよりわかりやすいとは思う。中野の冒頭の系図は、オーストリア系とスペイン系を明確にしていることもあって、なかなか良く出来ているのだ。
入門書として最適 歴史に突如現れ、実質上の「帝国」を築いたハプスブルク家の勃興、栄華、終焉までを4人の代表的人物を軸に描いている。
如何に権力を得て如何に拡大したか、ハプスブルク家の人間達の信条や特性、そして時代背景がうまく絡められて書かれており、すらすら読める。また、ある史実についての肯定的/否定的双方の歴史的解釈を載せており、なるべく中立に立った解釈を行おうとする筆者の意識が伺える。一方で、事実だけでなく、うまくストーリーを持たせたり、エピソードを引用したりしてところどころで理解を助ける配慮がなされている。
ハプスブルク家についての入門書として最適。
今日の東欧問題の起源であり、その解決策も示唆する、ハプスブルク家700年の支配 90年第1刷発行で、私の手元にあるのが04年発行の第34刷。これだけで本書がいかに支持されてきたかがわかる。私はハプスブルク家に関して、戦争に弱いくせに多くの民族を抑圧した王朝という偏見を持っていたが、本書でその偏見は見事に拭い去られた。凡庸な者もいたが、王者の矜持を胸に刻んだ立派な皇帝をなんと多く輩出したことか。これだけの長期間を新書版でよくコンパクトにまとめたと感心するが、作者があとがきで述べているように、結婚政策で国土を広げるとともに中世の華ブルゴーニュ文化によくなじんだマクシミリアン1世、太陽の没することなき帝国を、新旧両教徒の和解に腐心し、旅から旅の人生を送って巧みに統治したカール5世、諸改革を断行し中央集権化を図る賢明な女帝にして、国民と打ち解けた国母であり、家庭では慈母であったマリア・テレジア(王者らしくないとポーランド分割に最後まで反対したことを初めて知った)、そして民族主義の嵐の中で諸民族の鎹という重責を、次々に襲う家庭の悲劇にもかかわらず全うし、他民族が畏敬の念を失わなかったフランツ・ヨーゼフの4人が本書の中心をなす。そのため、三十年戦争など記載が物足りない所もあるが、それらのテーマについては他に優れた本があるので、そちらで補って下さい。各皇帝のエピソードも手際よく豊富に述べられている。本書全体を通じて、カール5世の「もっと先へ」とフランツ・ヨーゼフの「一致協力して」という人生の標語が心に残る。結局、ハプスブルク家による支配は今日の東欧問題の起源であり、かつその解決も示唆するものだったのである。最後に、他のレビュアーが指摘しているように、本書は実に読みやすく格調の高い日本語で書かれている。年表ともう少し系図と地図があればとも思うが、それらなしでも錯綜した人物間・国家間の関係がスッと頭に入ってくる。間違いなく、本書は名著である。
★読み易い★ ハプスブルク家の流れが分かり易く書かれており、入門書として最適。 マリア・テレジアしかよく知らなかったのですが、そこに至る経緯、そこから 失脚していく経緯が頭に入りました。また、有名なシェーンブルン宮殿以外にも、 訪れるべきハプスブルク家ゆかりの地がたくさんあることを発見しました。 ハプスブルクを訪ねる旅に出たくなること、うけあいです。(多分・・・)
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[ 新書 ]
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吉田茂と昭和史 (講談社現代新書)
・井上 寿一
【講談社】
発売日: 2009-06-18
参考価格: 798 円(税込)
販売価格: 798 円(税込)
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・井上 寿一
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カスタマー平均評価: 0
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[ 新書 ]
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英仏百年戦争 (集英社新書)
・佐藤 賢一
【集英社】
発売日: 2003-11
参考価格: 714 円(税込)
販売価格: 714 円(税込)
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・佐藤 賢一
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カスタマー平均評価: 4.5
フランス人同士の争いが国民国家フランスとイングランドを生んだ 征服王ウィリアム。熊のプーさんの映画にそんな名前が出てきたなあ。イングランド王家の祖らしいが、ホントはフランス人でノルマン公ギョームって言うらしい。11世紀にドーバーを渡って領土拡張したのが真相のようだ。
しかし、フランス語を話すその子孫が13?15世紀にかけて大陸に残してきた領土を巡って争ったのが世界史的には100年戦争と言うらしい。日本ではジャンヌ・ダルクが最も有名か。
しかし、この戦争を経て、ブルターニュ、ノルマンディ、ブルゴーニュ、プロヴァンスを併合してフランス国家が生まれる。海の彼方でもウェールズ併合、スコットランドとの抗争を経てイングランド、やがてブリテンとしてのナショナリズムが生まれていったようだ。
してみると、英仏両国が激突したのではなく、フランクの内輪もめがフランスとイギリスを形作ったと言うことか。
高校世界史で物足りなかった方へ これと全く同じ内容を西洋史で学んだことがあります。
講義は本書と同じぐらい興味深かったのですが、やはりテキストは冗長な感じで、我々が歴史に感じる魅力を減退させているように思いました 笑
その点、本書はこの時代の各国の本当にややこしい有様の中で、フランスとイギリスを取り出し、さらに現在我々の云うところの、”百年戦争”に的を絞っているので、読んでいる側としても頭の中がごちゃごちゃにならず、タイトルにもなっている『英仏百年戦争』を理解するのには非常に良い本だと思います。
個人的に印象に残ったのは、ジャンヌ・ダルクを「発見」したのがナポレオンだということです。
このあたりはナショナリズムなんかの思想とも相俟って、読んでいて非常に面白かったです。
ただ、ところどころ著者の主観も混じるので、あくまで「歴史読み物」くらいの認識に留めておいたほうが良さそうです。
歴史に全く興味のない人にはあまり面白くなく、専門でやっている人からは突込みが入る。
歴史に興味を持ち始めたくらいの人に一番適した本だと個人的には思います。
とてもわかりやすい 佐藤さんの小説が好きですが、歴史本もとても好き。
イギリスの領地がフランスにもあったことやフランス語をイギリスで
使用していたことは知っていましたが、細かい事情はしりませんでした。
同じ名前がなんども出てきたりして混乱しやすいのですが、この本のおかげで
すっきりさせることができました。
読みやすさ・面白さ、共に最高レベル。 我々が英仏百年戦争として学んだ出来事は、本当にイギリスという<国>と、フランスという<国>の戦いであったのか?
また、本当に<百年>戦争なのか?
我々の百年戦争に対する誤ったイメージを読みやすく面白い文章で覆してくれる良書です。
黒太子エドワードやヘンリー五世、それにジャンヌ・ダルクといった人物のエピソードも、歴史上の事実と創られたエピソードである部分を分けて解説してくれているのが良い。
また、いきなり百年戦争から入って理解できるかどうか心配されている方も、「前史」として1066年のノルマン朝の成立(ノルマン・コンクエスト)から記述を始めてくれているので、本史である百年戦争にはすんなり入れるかと思います。
巻末には年表とフランス王家イングランド王家それぞれの系図もついています。特に系図は百年戦争を理解する上で重要なので有意義な付録です。
読みやすさも面白さも最高レベル。
「戦争の経済学」も同時にどうぞ 上流社会のスポーツみたいなものだそうです。
あまり死者もでなかったようです。
ただお金がたまると戦争して借金だけが残ってそのたびに徳政令がでたようです。
現在でいうところのごみの問題みたいなもののようです。
2007年にノミネートされていないなら、2008年前半の最優秀経済文庫ではないかと個人的に思っていしまうほどわかりやすい内容の論文と資料の多さ。
「戦争の経済学」をいっしょに読んでいただければきっと戦争というものをより理解できるのではないかと思います。
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[ 新書 ]
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フランス革命―歴史における劇薬 (岩波ジュニア新書)
・遅塚 忠躬
【岩波書店】
発売日: 1997-12
参考価格: 819 円(税込)
販売価格: 819 円(税込)
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・遅塚 忠躬
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カスタマー平均評価: 5
人間の情念の巨大な噴出 1932年に生まれた著名なフランス近代史研究者が1997年に刊行した、フランス革命に関する青年向け入門書。18世紀末のフランスは植民地獲得競争と産業革命において、イギリスに後れをとっており、特にブルジョワ層の危機感は強かった。他方で貴族は上層ブルジョワを取り込みながら、根拠をすでに失っていた領主的諸権利を存続させており、旧体制のしわ寄せは都市と農村の大衆に集中していた。このような状況下、財政赤字解消策をめぐってまず貴族が王権に反抗し、議会開催を要求するが、それは貴族の意に反して平民を政治的に目覚めさせ、ブルジョワ主導の国民議会を成立させる。これを倒そうとする貴族の陰謀は、さらにパリ民衆の蜂起と農村の大恐怖を惹起し、ここに複合革命としてのフランス革命が始まった。ブルジョワは最初、自由主義貴族と組んで妥協的改革路線をとるが、貴族と外国の共謀、ヴァレンヌ事件を契機に大衆との同盟による徹底的革命路線=ジャコバン独裁に転換せざるを得なくなる。しかし、それは恐怖政治と表裏一体であり、著者はここに劇薬としてのフランス革命の偉大と悲惨を見るのである。恐怖政治はジャコバン派の支持基盤を狭め、内外の危機の緩和と共に崩壊し、その後ブルジョワは独自の利害を軍事力によって実現するが、それが結局ナポレオンのクーデタを招き、革命は終焉を迎える。著者は以上のように複合革命論にもとづき、諸階層の存在の在り方を具体的に示しながら、劇薬としてのフランス革命の原因、効果、態様について、イギリスや日本と比較しつつ、平易かつコンパクトに論じている。本書の叙述は明晰で具体例も興味深く、結論がやや抽象的ではあるが、歴史学の入門書としても有益である。ただし、環大西洋革命の一環としてフランス革命を見る視点は希薄である。
素晴らしい 歴史とはこのように解釈し、分析するものだと目から鱗の記述。対象が高校生、そして新書という制限された範囲でいかにして複雑なフランス革命を分析するか、から劇薬というコンセプトで鮮やかに説明している傑作。特に王政、貴族、ブルジョア、民衆の関係とその思想ベクトルを図示したのは、とてもわかりやすかった。 ナポレオンの登場まで、なぜ革命が右往左往したのか。またその後のパリコミューンなどの展開までもすっきり頭に入る。 現在、出版中の小説フランス革命を読むにも最適。 優れた入門書は、その後の読書を啓蒙するが、本書はその典型。本書を読んでそして本書を批判すべく勉強を始めた私でした。
歴史の背景と解釈 アンバリットの小銃押収、バスティーユ襲撃から始まるフランス革命と
呼ばれる一連の史実を解説する内容ではない。身分制度の敷かれたフランス
社会にあってなぜ平民の反乱が起きたのか、なぜ次々と様々な闘争に至った
のか、平民同士での争いが生きたのはなぜかなど、歴史から本来学ぶべき
背景や解釈を高校生向けに書いている。
これまでに比べれば生活格差がぐんと広がった日本。暴力という形ではない
にせよ、なんらかなの革命が起きる共通点もあるのかもしれないなあなどと
想いながら読みました。
史学について学ぶのにも適しています フランス革命史のみならず史学の何たるかを知るによい一冊です。
筆者はフランス史研究の第一人者です。これまで積み上げてきた研究をもとに、フランス革命=「劇薬」説をとっています。
フランス革命の偉大さは同時に大きな悲劇でもあったとしています。日本国憲法第25条は恐怖政治が残した遺産であるという主張も、「フランス革命の二面性」を考慮に入れると理解できます。
革命を進行させた者は社会階層である貴族、ブルジョア、平民に分かれるとしています。革命の路線はこの三つのグループの内どのグループが支持したかによって変わるとしています。
筆者の論は明快で、一貫しています。史学を触れるにも適した一冊です。高校生のみならず、幅広い年齢層が読んでも十分に読み応えのある一冊です。
「劇薬」以上のフランス革命 本書は、岩波ジュニア新書屈指の名著であり最高のフランス革命入門書の一つでもある。安易な革命礼賛書と違い、革命の二面性を公平に述べている。また革命構造を貴族、ブルジョア、大衆の三極構造で鮮やかに解いてみせる筆者の筆裁きはさすがである。本書ではフランス革命を「劇薬」として捉えてるが、革命後期の独裁恐怖政治がスターリン主義、ポルポト体制へと、共に生まれたナショナリズムがその後の帝国主義、総力戦体制へといずれも19?20世紀において悲惨な影響を及ぼしたその後の歴史を見るとフランス革命は人類に対して「劇薬」以上の毒薬ではないか?
歴史にifは禁物だがもう少し穏便な別の道はなかったのかと個人的に思った。
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[ 新書 ]
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軍需物資から見た戦国合戦 (新書y)
・盛本 昌広
【洋泉社】
発売日: 2008-05
参考価格: 819 円(税込)
販売価格: 819 円(税込)
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・盛本 昌広
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カスタマー平均評価: 5
森は現代の石油並みの戦略資源だった 戦国時代における森林資源の戦略的重要性を追求にしたとても珍しい戦国時代本です。従来の戦国時代本のような「合戦!合戦!また合戦!」というような構成ではなく、後北条家の山林原野管理行政を丹念に記述していきます。
この本を読むと、戦国時代の山林原野は現代の石油と同様の戦略資源であったということが理解できます。
【おススメな人】戦国時代の新たな側面を発見したい方
ヨコレス的レビューで恐縮中 物資調達の観点から(とりわけ北条氏を中心に)見直された戦国合戦。
合戦を描くことにより、物資の調達という側面から、かつての社会編成も垣間見えるようになってい
ます。
ただし、歴史を見直すにあたってクリティカルな部分で、著者は若干無頓着ではと思える面が多々。
封建制の領邦を近代国民国家とちゃんと区別できていなかったり、環境問題に関連する“近年の”
視座を無批判に歴史に適用してしまっていたりなど。
それでも次の2点で、たいへんに面白く読めました。
その1:やっぱりモノで語らしめるのは強いな、と実感したこと。
上述の無頓着さは、もっぱら社会科学側から歴史学に提示された問題点だったりして、そこが著者
は無頓着かも、と思ったわけですけれども、その社会科学では観察の理論負荷性だの過去の不可
能性だの事実の社会的構成だの、なにかと入り組んだお話をしていますが、そーであっても、やはり
「モノ」で語るのは説得力があるなあ、と。
その2:怪しげな仮説への効果的な反論になっていること。
武道というのは近代スポーツとは別様の身体技法の集積であるとは理解しているつもりですが、
近年、ある種オカルトめいた「武道礼賛」が見受けられます。
武道に秀で、武将として有能であることが、組織運営の点で有能であることに直結するかのような
珍説を主張する哲学研究者もいるくらいですが、本書は、それへの有効な反論になってもいます。
【武道の達人である → 領国経営者・民政管理者として有能である蓋然性が高い】
という筋道ではまったくなく、むしろ因果としては逆で、
【合戦を遂行できるだけの資材調達・組織化能力がある → 武将として機能できる】
という筋道である、ということですね。
戦国時代の環境史 タイトルの示す領域に比べ、中味は「戦国時代の関東を中心とした草木資源」とかなり狭くなりますが、面白く読めました。
戦乱が続くことにより、多くの木が切り出され植生が変化していく様子やその対策など古人の知恵や環境への配慮、あるいは現在の景色がこの時代の環境破壊に起因することなど、多くの古文書をあたり、紹介しています。また当時から植林のための苗木が売買されていたというのは驚きでした。
「環境史」という学問の分野があるそうですが、なるほどこういったことを研究しているのかと納得しました。
洋泉社新書は粒ぞろい、この本も名著! 「はじめに」だけでグイグイ引き込まれます。曰く、テレビドラマで取り上げられる合戦のシーンや、合戦の屏風絵などをみても、柵に使われる木材は大量です。このほか主力の武器であるヤリの柄も木製(あるいは竹製)ですし、鉄砲をつくるのにも炭が必要です。さらには旗指物には竹が使われますし、夜になれば篝火が焚かれる。
《このように合戦を行うには大量の木や竹が必要であり、戦国時代には森林や竹林の伐採が盛んに行われた。だが、無制限に伐採を行うと森林資源が枯渇し、合戦を続けていくことが困難になっていく。そのため、過度な伐採をしないように、森林資源を管理する必要がある。合戦を行う主体である戦国大名はこうした点に気を配らなければならなかったである》
素晴らしい。気がつかなかったな…。こうした森林利用と保護の"環境マネジメント"を、主に北条氏の文献を中心にみていくのが本書ですが、栗は生長が早い反面堅く長持ちし、腐りにくい性質がある(p.31)なんてあたりの指摘もいいなぁ。網野善彦さんが、日本の歴史家はもっと栗の木について知らなければならないとどこかで書いていましたが、改めて栗と日本の歴史に想いを致します。
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[ 文庫 ]
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文明の生態史観 (中公文庫)
・梅棹 忠夫
【中央公論社】
発売日: 1998-01
参考価格: 780 円(税込)
販売価格: 780 円(税込)
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・梅棹 忠夫
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カスタマー平均評価: 4.5
『文明の生態史観』の素晴らしさ 梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』と初めて出会ったときの衝撃はものすごいものがありました。世界の歴史の発展過程の法則といいますか、その仕組みがものの見事に解明してあり、まるで手品の種を見せられたような鮮やかさを感じたものです。最初に『中央公論』誌上に発表されたのが1957年2月ですので、すでに半世紀以上過ぎたことになります。
その中でも、「東南アジアの旅から‐文明の生態史観・つづき」に記載されている有名な図は、今見ても実に魅力的です。真ん中に乾燥地帯をおき、その隣にI. 中国世界、II.インド世界、III. ロシア世界、IV. 地中海・イスラーム世界をおき、その周辺に日本と西ヨーロッパを対比して置いています。そして東ヨーロッパと対角線に東南アジアを置くという実にシンプルな構図の提示がいかに新鮮に映ったことか。日本や西ヨーロッパにおいて存在した封建制のあり方と共に、その高度な文明の成熟度合いを見事に表した図だと思います。簡単な図式で文明の歴史が説明できる、とまでは梅棹氏も断言していませんが、近代化とその後の発展過程を見るにつけ、分かりやすく捉えやすい図式としては最高のものだと思っています。
20世紀に書かれた本から心に残る本、後世に残したい本のアンケート調査で、司馬遼太郎『坂の上の雲』、西田幾多郎の『善の研究』、夏目漱石『我輩は猫である』についで、本書が第4位に入ったそうです。それほど普遍的な内容を持った論考であったわけで、歴史の捉え方が50年以上支持されることに原著の魅力のほどが理解できると思います。
ユーラシア諸文明のなかの新しい日本観を築いた古典 本書は1950-1960年代に著者がアジア諸国を調査・旅行した経験を踏まえて、ユーラシア大陸における諸文明の見取り図を実証的・生態的に描いたものだ。著者は世界における日本の位置付けを熟考し、東洋・西洋という慣習的区分を乗りこえ、ユーラシア大陸を高度な近代産業文明の段階に達した第一地域、およびそうでない第二地域とに区分する。そして、日本をユーラシア東側における唯一の第一地域として、ユーラシア西側の西欧諸国と並行的に進化してきたのだという。第一地域はその特徴として、封建制の存在と早い時期からの市場経済の発達があげられ、第二地域はその特徴として、古くから文明が栄えて専制的帝国を築いたが、封建制を発達させることなく、絶えず遊牧民による破壊的圧力にさらされ続けたことがあげられる。
私自身の海外旅行の体験からいっても、例えば中国人とアラブ人の行動様式に多くの共通性があること、日本人と西欧人とに共通する資本主義・市場経済への適応度の高さ等、本書に納得できることは多い。また本書の図式によれば、日本人と中国人の文化的差異が、西欧人とアラブ人の違いに匹敵するほど大きいことになるが、これもよく納得できる。ただ、壮大な理論としては当然かも知れないが、複雑な世界をあまりに単純化していることや、日本人としての著者のプライドなのか、日本を過大評価する傾向が少々感じられる。しかしながら、本書は欧米先進国との比較ばかりだったそれ以前の日本論と違い、ユーラシア諸文明の中の日本文明という新しい視点を切り開いたことで、発表当時から大きな反響を呼んだことを納得することができた。
「東洋=西洋」を崩した、新しい文明観 単純な、「東洋=西洋」の文明観を否定し、筆者は間に「中洋」を設ける。
さらに、「西ヨーロッパ」と「日本」をそれぞれ1ブロックとして扱い、それを第1地域、残りを第2地域とする。
筆者の言うように、アジア地域よりも西ヨーロッパに、日本は多くの共通点を見出せる。
とりあえず、楕円で書かれたユーラシア大陸の区分図はすごいと思った。
左右の端っこに西ヨーロッパと日本、大陸を斜めに乾燥地帯が走って、中国、インド、ロシア、中東・地中海、の4ブロックに真中を分ける。
その後筆者は東南アジアと東ヨーロッパを導入するが、地図帳を見てみて、その正確な区分に驚いた。
本書は短編集のような構成で、軽く読めます。
生態史観以外にも、アジアの面白い風習や文化などもいろいろと書かれていて、そうしたところも楽しめる本です。
未来を支える名論文 固体とその発生地の環境条件との相互作用を考察する生態学的方法論をもとに、地球上の文明の比較がされていました。
地理的・時間的に広範に物事を見る想像力、事象を分析するための綿密な方法論、複数の学問領域を越える学際的研究など内容以外にも多いに学ぶことが多い好著です。本書には筆者の各種論文・公演が整理されているので、筆者の生態史観そのものの変遷(Succession)が見えます。
筆者の意図ではないにしろ、ダーウィンの「進化」論が西欧文明中心主義者を支えたように、生態学をもとにした筆者の文明の「変遷」論は今後の多極主義者の支えになる歴史的な意味をもつ論文なのではないでしょうか。
大物のアプローチ 東洋と西洋という区分による、(旧大陸についての)常識的な世界像を覆すような試論です。著者はこの区分の変わりに、第一地域(=西ヨーロッパおよび日本)、第二地域(=その他の地域)という大胆な区分を提唱しています。著者のこうした括りの根底にあるのは、現在(1957年)で、高度な文明を持つのは西ヨーロッパと日本しかないという事実への認識です。これをベースに、ではなぜ第二地域では高度の文明が未発達なのか?第一地域と第二地域の根本的な差異は何なのか?いうことを、封建制が発達していたかどうかなどの社会構造の違いや、地域環境的条件の違いなどに求めていくわけです。アウトラインでしかないと著者も認めているとおり、弱い具体例から主観論で筆を滑らせがちですが、当時相当議論を巻き起こしたそうで、斬新な世界像だったことが伺われます。著者のこうした世界区別の妥当性については口を挟める分際ではないですが、一読して明らかなように、対象に対するアプローチの仕方が一般の学者とは違ってかなり大胆なように思いました。さまざまな資料はあくまで従で、まずは自分のあたまでモデルを構築し、それを主としているような感じです。また補助線の引き方によって世界などいろんな見方ができるものだなといまさらながら再認識させてくれるような本でした。単に内容だけでなく、その対象への迫り方などについてもいろいろと参考になる本なのではないかと思います(ついでですが、ひらがなが多く中学生でも抵抗なく読めるかも)。
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[ 文庫 ]
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アンネの日記 (文春文庫)
・アンネ フランク
【文藝春秋】
発売日: 2003-04
参考価格: 900 円(税込)
販売価格: 900 円(税込)
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・アンネ フランク ・Anne Frank
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カスタマー平均評価: 4
10代で読んだときは、最後まで読めませんでした。 10代で読んだときは、最後まで読めませんでした。
悲しい物語を、読んで、自分が何もできないことを知って、途方に暮れていました。
完全版が出たこともあり、文庫にもなっているので、大人には手軽に読めるようになっていることを知りました。
今度、図書館で見かけたら、ぜひ読んでみようと思っています。
War ourselves. 第二次世界大戦時のドイツの愚行を記した資料は数多く存在するが、本書はそのなかでも一人の純真で知的な少女の手記から当時を垣間みることが出来る。主観的な物の見方や個人的な体験等の記述も多く見られるが、それゆえに、生活や現実性が伝わってくるので他のホロコースト関連の著作、ルポとは一線を画し名作として語り継がれている所以なのだろう。昨年に、ドイツがユダヤ民族に対して謝罪をしたことがニュースになったことは本書の効用もあったのではないだろうか。
よく判らないけれど、感じたこと。 嘘か真か。日本人の性格なのでしょう。
だから、幕末の作家が書いた豊臣秀吉の「信長の草履」の話もザックリと切られました。壮大な物語にしたかったのでしょう。誰にでもある欲求だと思います。その問題は。
「草履ではなく下駄か。胸で暖めていたのか背中か」
太閤記は昔から様々な人間によって書かれてきましたけど、近代になるにつれて話が大きくなっています。
…多少…どうでもいいかもしれないなぁ、と思ってしまいます;
アンネちゃんの、この日記は、作品であるか、唯の日記か。との問題で、これも同じような事なのだろうか。と思いました。
多分、翻訳する時点で、何かの気持ちが入ってしまい、日本語的に微妙なものになってしまったり。
しかしそんな些細な事ではなく、世界が動いて「嘘か真か」と騒いでいます。
草履と一緒にしては駄目かな、と思いつつも「…平和だな」と感じます。
お父様は大変…というか、あんなところに閉じ込められていたのが本当ならば、暇でしょう。
では、何を言うか…というと、フランク家がいかに立派か。そして世論をひたすら喋るかもしれません。アンネがそれを聞く事はあったかもしれません。
日本の小学生でも、父親がそんな話をすれば、堂々と作文に書くでしょう。
「受け売り」というものでしょうか。
確かに生き残ったお父様は、アンネの日記がもし、本当にあるならば…
「お父さんの言っていることは、結局過去の話で、私にはピンとこないし、同じ事ばっかで聞き飽きた」
と、正直に書かれていたら、書き直すでしょう。
全て目を通し、アンネが書いたものは落ち着きのない大人の喜劇だとしたら…。
捏造するかも;
アンネはとてもしっかりした子どもだと思いました。写真で見た本人を見た感想です。
そして、アインシュタイン(こっちはヒネクレた男性ですが)と似ている笑顔だと思いました。
とてもイタズラで活発で、ユーモアが溢れている笑顔だと思いました。
「お父さんが一生懸命平和を訴え、自分を偉く見せたい事に必死で、頑張って女の子の本を書いている。でも無理。そして作家に依頼した。世界中が嘘か真か論議をしている。技術は進歩し、最新の技術でこれは嘘である、と発表した」
のが本当であったならば。
もしかしたらアンネの性格ならば天国で笑っているかもしれません。
草履と一緒にしてしまってはいけないかもしれません。いや、確かにいけないのですが。
まるで喜劇のようで、大声で笑ってしまいます。
「これこそが平和だ」と。
彼女の日記を読んで、色々出てくる疑問に大人が必死になっている。
結果オーライという事で、アンネが一番欲しかったものが形になっている。
平和、というのはこういう事なのかもしれません。
「遠い世界の、昔の話」では無い。 小学生時代に図書館のポスターで知ってから早20年。。。
やはり読んでおきたくて購入しました。
読み終わっての感想は、
「この娘の日記をもっと読んでいたいなぁ」という感じでした。
なんというか愛着がわいてきます。このアンネという娘に。
その分最後のページの「アンネの日記はここで終わっている」の一文が重く響きました。
この文春文庫さん版の表紙のイラスト、好きです。
centrist 「世の中には善神アフラマズダと悪神アーリマンがいる」これは人類でも最も旧い宗教の1つの考え方である。実際善悪問答に於いては欧州知識人は好んでこの引用をする。
さて世の中には良い捏造と悪い捏造があるようだ。良い矛盾、悪い矛盾が存在するという。アンネの日記は善神アフラマズダに依拠するようだ。むろん「きけわだつみの声」もそうだ。なぜなら「ドイツ学生の手記」のように誰も手を加えないと、善なるものとして扱えないからだ(ゆえに聞いたことのない人も多かろう)
そういえばアンネの日記に関しては『アンネの日記 研究版』(文芸春秋)を挙げる人が多くてもわだつみでは『わだつみの声の戦後史』に触れる声は少ない。なぜだろうか。
善悪の闘いは古代から何も変わらない。何も。
人間は霊的に進歩するとは誰の言葉だっただろうか
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[ 新書 ]
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神聖ローマ帝国 (講談社現代新書)
・菊池 良生
【講談社】
発売日: 2003-07
参考価格: 777 円(税込)
販売価格: 777 円(税込)
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・菊池 良生
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カスタマー平均評価: 4.5
神聖とローマを名乗る意味が分かるドイツ先史 神聖ローマ帝国、それは不思議な帝国。
・ローマを領土としてはいない。
・帝国と言いながら、実際には皇帝の権力は絶対ではない。
・皇帝は選帝侯によって選挙(もちろん金銭取引など何でもあり)で選出される。
神聖ローマ帝国は1000年に渡って何となく(?)存在した。当初は、かつての西ローマ帝国再建を夢を見ていたようだが、その目的が達成されることはなかった。最終的には皇帝が帝国を解散するという勅語を発して消滅した不思議な帝国である。
ややこしくて長い歴史を1冊にまとめたものなので、ドイツ先史として価値があるのではないだろうか。ローマという言葉に込められた西欧のアイデンティティ、神聖という言葉の意味もよく分かる。
慣れたら、おもろい! かつてヴォルテールは、この帝国は、「神聖でもなく、ローマ的でもなく、そもそも帝国ですらない。」といっている。本書は、この神聖ローマ帝国が、なぜ「神聖」であり、「ローマ的」であり、そして「帝国」になったのか、その過程を人物列伝的風味も取り混ぜて、そこそこ詳しく著したものである、。
著者は、「神聖」「ローマ的」そして「帝国」の意味合いをじっくりと説明したかったので、大空位時代までに全ページの半分を使ってしまった。一般的なハプスブルグ帝国の解説書なら、マリア・テレジアとその一族、特にマリー・アントワネットあたりを重点的に書いてあるものが多いような気がするが、本書にはマリーは出てこない。
特徴的な文章に慣れるまでには少々手間がかかるかもしれないが、引き込まれる面白さに溢れている。
連合国家だったのね。 神聖ローマ帝国。
ローマ帝国や東ローマ帝国のような強大な国家像を思わせる大層な国家名。私も一時期までは中世ヨーロッパを支配した大帝国を想像していたが、本書はそんな勘違いしている人でも読める入門書。
神聖ローマ帝国は教皇権力とイタリアを抜きにしては語れない。
強力な中央集権国家として台頭するフランスとは対象的な連合国家ドイツの代表として選出された王は教皇により戴冠を受けて皇帝となる。したがって、イタリアへの軍事進出と教皇との主導権争いが、この連合国家の歴史である。
フリードリヒ=バルバロッサ、フリードリヒ2世という強力な君主についてかたられるくだりは面白いが、逆に言えば強烈な個性に依存した連合国家の長という不安定さを証明している。
これら歴代の皇帝たちが、ドイツの集権化に傾注するのではなく、イタリア対策に没頭したことが、ドイツ、イタリアが集権国家として立ち遅れた遠因だるとするとこの連合国家の近代への影響は、計り知れない。
そういった欧州全体を巻き込む大きなうねりを神聖ローマ帝国を通じてみることができる。お勧めの一冊です。
すばらしい!!! 神聖ローマ帝国とはキリスト教からローマ帝国の後継者と認められた国だからだそうです。
どうりでキリスト教との争いが多かったわけです。
納得。
現在でいうところのごみ処理の問題かと。
イメージするのが難しい帝国 記憶を辿ると、高校の世界史の授業において、ヨーロッパ中世史はかなりの比重を占めていたはずである。しかし、神聖ローマ帝国に関してはその成立年を暗記したくらいで、授業でもテストでも、それ以上のことに触れなかったと思う。
本書を読むと、その理由がわかる気がする。神聖ローマ帝国を具体的にイメージさせるのは、古代ローマ帝国などに比べてはるかに難しいのである。ひょっとすると、教師の側でもよくわかっていなかったのではないか?
神聖ローマ帝国を完璧にイメージ出来るようになった訳ではないが、神聖ローマ帝国と言う不可解(?)な帝国が、1806年まで存続し得たヨーロッパの不可解さを理解出来たことが、本書を読んだ一番の収穫と言えるだろう。
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[ 新書 ]
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貧困の克服―アジア発展の鍵は何か (集英社新書)
・アマルティア セン
【集英社】
発売日: 2002-01
参考価格: 672 円(税込)
販売価格: 672 円(税込)
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・アマルティア セン ・Amartya Sen
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カスタマー平均評価: 4.5
民主主義の重要性。 ノーベル経済学賞を受賞した、
アルマルティア・セン氏の講演をまとめたもので、
民主主義の重要性を中心に展開されています。
読み手(私)の問題なのかも知れませんが、
読んでみて、
「へぇ。そうなんだ」
という感想しかありませんでした。
文章自体は講演を基にしているので、
読みやすいです。
ただ、話が重なっている部分があるので、
残念でした。
かなり評価が高いようですが、
教養のある人には驚くべきような内容なのかも知れませんが、
私個人としては、驚くべき箇所がわからなかったです。
この本の良さがわかるように、
努力しないといけないかもしれませんね。
評価としては星3つとさせていただきました。
心が洗われる思いの講演集 これはノーベル経済学賞を受賞した学者であるアマルティア・セン氏の講演集である。経済学者にしては述べていることが哲学的であるなあ、と思っていたら、後でこの本の訳者が解説してくれるには、セン氏は経済学と哲学の橋渡しを目指しているのだそうだ。ちなみに、この訳者の大石りら氏の訳と巻末のセン氏についての解説が真に適切で、セン氏の思想をよく理解しているからこその名訳だったのだなと感心した。
自分自身の思い込み或いは傲慢をいましめてくれたのは、セン氏の言う、民主主義の普遍性である。リー政権下のシンガポールの発展をして、発展途上国においては権威主義的体制国家のほうが経済発展に寄与する、との考えは常に為政者からの発言であり、一般庶民のそれではない、とセン氏はボツワナの事例を挙げて反論する。そのことは、別の言葉で言うと、民主主義、或いは社会の透明性に欠ける社会においては、10%の経済減速が及ぼすことの重大さは、国民一人ひとりが10%づつの負担をするということではなく、困窮にあえぐのは低収入の人々で、一部の富のある人たちにはほとんど影響はない、という事例でわかりやすく知らしめててくれる。
飢饉は食糧不足が原因ではない、巷の情報を隠したり、批判勢力を抑圧するという民主主義の欠如(独裁政治)が引き起こすのである、という説明には目からうろこが落ちる思いであった。
セン氏は更にアジアに対する一部西洋社会の人々による、民主主義或いは寛容性に対する誤った見方について、アショーカ大王の宗教に対する慣用性を引き合いに出して正している、中世の西洋におけるキリスト教異端者裁判のようなものはアジアにはなかった、という考察である。
経済学者だから何ほどの難しいことを言うのだろうかと思っていたが、真にわかりやすい語り口で、こういうものを読むことによって心の安らぎを得ることができたのはなによりであった。
当たりさわりなし 発展とは何かについての講演録。
<「発展とは、GNP成長、所得や富、また財を生産したり、資本を蓄積したりする以上のことを意味している。ある人が高収入を得ていることは、彼の人生における選択の一つであるかもしれないが、それは人間の生の営みすべてをあらわしているとはいえない」[…]「発展のプロセスは、人々に対して、個人的にも集団的にも、その資質を完全に開花させることを可能にして、また同時に、そのニーズや利害に応じた生産的かつ創造的生活を営むことができるような政策環境を創り出さねばならない。人間的発展はしたがって、人間の潜在能力を形成するだけではなく、これらの潜在能力をいかに活用し、発揮させるかということにも関わっている」>(p. 170、「解説」中の訳者による引用)
ということ。なんだかいろいろ書いてあるが、本書のタイトルになっている「アジア発展の鍵」とは、要するにそういう政策環境のことである。当たり前のことである。
ということで当たり前のことを当たりさわりなく述べているだけの、当たりとはいえない一冊。新書と比べるのもなんだが、『セイヴィング・キャピタリズム』のなんかの方がよほど中身のある議論を展開している。
非常に分かりやすい 貧困の克服は非常に分かりやすいです。
重要な要素が簡潔にまとめられています。
いくつかの考察は、今でも意義が薄れていないです。
学部の人だけではなく、普通の人も一読をお勧めします。
世界で最も重要な問題 本書は、「貧困」という最も恐ろしい問題に対する優れた分析と、発展のために何
が必要かが述べられている。
内容については他のレビューに詳しいですが、更に付け加えるならば、本書は貧困
と発展の問題の考察を通じて、人間に最も必要なこととは何か、を教えてくれるこ
とです。
実践的というよりは理論的内容になっています。なので、2006年度ノーベル平
和賞を受賞されたムハマド・ユヌス「ムハマド・ユヌス自伝」をも合わせて読まれ
ることをお勧めします。ここには、グラミン銀行を通じた、貧困撲滅のための「実
践」が述べられているので、センの言う理論の現実が見えてくると思います――両
者は必ずしも矛盾するものではありません。
もう一つ……本書はアジアにおける貧困と発展の問題を述べていますが、それは、
決してアジアに限られることではありません。ですから、本書では普遍的な価値を
有する議論がなされています。
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[ 新書 ]
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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)
・磯田 道史
【新潮社】
発売日: 2003-04-10
参考価格: 714 円(税込)
販売価格: 714 円(税込)
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・磯田 道史
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カスタマー平均評価: 4.5
よく研究しています! 江戸時代の,武士の暮らしが家計的な面からよく調査されています。
具体的な,現代生活との比較評価もされていて最後まで興味を持って読むことができました。
歴史ものが好きな方、江戸時代の会計に興味ある方は面白く読めると思います。
涙ぐましい武士の生活 それほど低い身分の武士でないにもかかわらず、こんなに安い年俸で働いていたとは驚きである。涙ぐましいまでの節約生活と金貸しとの交渉。
武士であるがゆえに、節約できない冠婚葬祭、儀式、習い事、民とは変わらない離婚率・・・思わず引き込まれる。
江戸時代末期の武士の家計簿から、その当時の生活環境を知るものであるが、それほど低くはない身分の武士であるにもかかわらず、年収250?300万と貸地からの地代で食べていたというから驚きである。これでは、次男、三男は養子に行ければおんの字で、ほとんど野垂れ死にである。
ましてや今回の調査は、加賀藩で幕末に新政府軍についた側であるにもかかわらず、明治維新以後もほとんど給料は上がらずである。たまたま、明治政府の海軍の経理将校になったから良かったものの、戊辰戦争で幕府側についた人間は、本当に食っていけなかったのだろう。
俸禄が取りやめられて、目鼻がきく武士は都内に土地を買うなどして一部地主として生き残ったようだが、公務員になれず農業や商業に職業換えした武士がほとんどだったようだが、ほとんどが失敗。
新書にしては、非常に良い出来である。
楽しめました。 発見された古文書の一つに含まれていた精巧な家計簿。
著者が、その家計簿から“武士の日常”を考察し、
解説しているという内容の本です。
この本は、
「ある武士を中心とした、家族の一生」
「現代人にもためになる家計再生への努力」
「先を見通す“行動”の重要性」など、
読む人によって様々な表情を見せてくれる本です。
数字が比較的よく出てくるので、
苦手であれば何となく流れを追うだけでも楽しめるでしょう。
軽い気持ちで読む人から、
勉強のために読む人まで、
自分の読みやすいように読めるおもしろい本だと思いました。
地味ながら良い仕事をする“職人”のような本です。
評価は星5つです。
江戸を当時の家計簿を通して伺える良書。 150年前の猪山家の家計簿が神保町で売り出されていた。それを著者が購入し内訳をまとめた本。加賀藩の会計係が借金返済計画を経て、その達成に向けて几帳面にも饅頭一個の購入履歴まで残していたらしく恥しいほどに家庭事情を暴露されている。
で、著者はこの家計簿から当時の武士の慣行や消費性向等を分析しており非常に面白い。目出度い時に鯛が買いたくても買えなくて結局カレイを買ったとか、妻がお産の際には奮発して当時は高級な飴玉を買って妻に舐めさせてあげただとか、凄く生活観溢れて読んでて面白い。
さらに家計簿以外の情報(例えば時代情勢や慣行等)に関しても著者がコメントを付けてくれているので多面的に当時の姿が伺える。
涙ぐましい節約生活 武士は喰わねど高楊枝…。
こんな細かい人だからこそ赤字家計を何とか出来たのでしょうね。
我が家にも先祖にこんな人が居たら 今頃大金持ちだったでしょうに…
というのは冗談で、その時の歴史的背景も
書かれていますのでわかり易く
読みすすむうちに どうやって次は やり繰りするんだろうか…
次のどうなるのだろうか…という
他の本には無い不思議なドキドキ感があった。
節約の涙ぐましい努力に本当に頭が下がりました!!
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