カスタマー平均評価: 4 音楽を捉える感性が狭く、要注意。しかも調査不足が散見される。 入門書として使える部分はあるが、以下のような問題あり。
1.レコード会社のマーケティングならともかく、そもそもポピュラー音楽とクラシックとの二元論の強調には失笑。著者は、キース・リチャーズ、ロビー・クリーガー、ケイト・ブッシュ他多数が、クラシック音楽から影響を受けていることを知らないのだろうか?また、聴いてわからないのだろうか?
2.(P.116)「ジョン・レノンはチャック(・ベリー)を“最初のロックンロール詩人”と呼んだが、本当に最初だったのはルイやネリーなのだ」とあるが、レノンは、単に若者の日常的生活感を歌詞に盛り込んだという理由でベリーを詩人と呼んだのではない。例えば、Johnny B.Goodeの "Someday you will be a man. And you will be the leader of a big old band”とは、黒人が一人前の人間として認められる日が来る、更にはリーダーに、との深い比喩なのである。この深遠さからレノンはベリーを詩人と呼んだのである。
3.(P.26)「ジャズ・ミュージシャンほど、自分たちの音楽と比較してロックを軽蔑したり」とあるが、例が示されず説得力無し。マイルスが自伝でジミ・ヘンドリクスについてどう述べたかは無視らしい。ウェス・モンゴメリーらのロック曲カバーについてはどう説明する気なのだろう?
4.(P.169)「『シング・アウト!』という雑誌があった(今もあるのかもしれない)」は評論家の言葉だろうか?同誌は今でも発行されている。
5.(P.199)セックス・ピストルズがアイランドからレコードを出した、とあるが、ヴァージンの誤り。
著者には、 “I ain’t lookin’ to categorize you”とのディランの言葉と、「音楽には2種類しかない。良い音楽と悪い音楽だ」とのマイルスの言葉を贈りたい。 20世紀ポピュラー音楽史の批判的総括 本書は、1932年に生まれ、銀行員を経て、音楽評論に従事し、1969年『ミュージック・マガジン』を創刊した著者が、20世紀を「ポピュラー音楽の時代」としてとらえ、1998年秋から1999年初夏にかけて、世界のポピュラー音楽をまんべんなく視野に入れ、それらと社会との関係に目を配りながら、批判的に総括することを目ざして書き下ろした新書本である。自己評価では、まずまず狙い通りの本とされる。著者の言う「ポピュラー音楽」とは、個人的な才能と努力によって直接に作り出される点で芸術音楽の要素をもつとともに、その音楽家が大衆の代弁者でなければならない点で民俗音楽の要素をも併せ持ち、しかもその音楽家と大衆が商品市場によって媒介されていることによって特徴づけられる、20世紀に特有の現象である。著者はその歴史を、19世紀のカリブ海・南アジア・東南アジアの融合音楽から説き起こし、1920年代以降の米国における商業主義との緊張関係を経て、20世紀末の黒人音楽の大反撃、「芸能」への原点回帰、虚像化、通信ネット配信、ワールド・ミュージックの高揚に特徴づけられる、ポストモダン音楽化に至る過程として論じている。本書のその他の特徴としては、第一に無味乾燥な教科書となることを避け、具体的な音楽・音楽家の話と抽象的な音楽論とのバランスに注意していること、第二に米国本位の立場からの従来のポピュラー音楽論を相対化し、むしろ非西欧の音楽の価値を再発見しようとする姿勢を明示していること(通説批判)、第三に文化混交を重視する姿勢が顕著であること、第四に著者の独断と偏見(?)を前面に出した評価を行なっていること等が挙げられる。長年日本の音楽評論を先導してきた著者ならではの、豊富な経験と幅広い視野に裏打ちされた、興味深い本だった。個々の音楽・音楽家の評価の問題、影響関係の分かり辛さ(図が欲しい)等が難点と言えば難点か。