いくつかの章の冒頭に、その匿名原稿からの抜粋が置かれるという形がとられているのだが、内容が劇的で、つかみはOKといった印象だった。またこの原稿の内容を手がかりに、主人公が著者を突き止めようとするのだが、少しずつ明らかになっていく事実は、予想外に現実的であるところが、かえっておもしろかった。現実的ながらも退屈ではなく、この展開にはまずまず満足だった。しかし最後の最後が、少し惜しい気もした。 読まぬが花?大いに期待はずれだった。内容が暗い事に文句を言う気はない−あらすじからある程度予想できる事だ。だが、現代のアメリカ社会のさまざまな暗い側面が、本筋とは直接関係なくダラダラと書き連ねられていて、話が遅々として進まないのには、ほとほとウンザリした。本筋の方も、大いに期待はずれだった。まず、タナーが突き止めた実際の事件の真相は、単純だが迫力のある匿名小説の内容に比べると、不自然で説得力に欠けるもので、かえって話をつまらなくしてしまった。また、小説を書いたのは誰かという、最も興味深い謎の答えも、ガッカリさせられるものだった。読まずに、あれこれ想像して楽しむだけにしておけば良かったと思う。