この本の単行本が出た頃の寺島靖国は、現在のように気取ったところがなく、ジャズ界の権威に対抗して突き進んでいくドン・キホーテのようだった。故野口伊織氏への対抗意識が活き活きと描かれた「オペレーション・パラゴン」の項なんて、何度読み返したかわからないくらい面白かった。
でもいつの間にか、この人は自分が「権威」になってしまって、ジャズ界の大御所を気取ったような本しか書かなくなった。残念である。 独断と偏見。そこがいいジャズの神様コルトレーンをを好きでない。と言い切るのは天皇制批判より勇気が要ること?だが、さらりと言ってのけるのは、人生のほとんどをジャズに入れ込んでいる寺島さんならではの発言だ。実際、名盤と言われているものでも、聴かれないアルバムは多い。寺島さんのこの本で取り上げられているのは、ズート・シムズ23枚、スタン・ゲッツ17枚に対して、ジャズの巨星マイルスは5枚、コルトレーン2枚、ロリンズ5枚のみ。「ジャズは曲から聴け」ともの主張は凡百の評論家にはない視点。思わず共感してしまう。やはりジャズは独断と偏見で聴きたい。1001枚の丁寧な紹介。それでこの値段は安い!!(松本敏之)
心理学を勉強している学生さんにもお勧めですよ。
著者の数奇な運命についてここで述べるのは控えさせてもらいますが、時代に翻弄されながらも自分を見失わずに生きる姿勢は凄いと思います。心無い人は「中国人だと思っていたのに騙された」というのでしょうが、抗日の激しい時代を中国人の中で成長しなければならなかった少女がこれほどまで中国人になりきるべく努力をしなかったら、後に国策映画に利用されることもなかったでしょう。
間近に知る日本人実力者や満鉄・満映関係者、中国を愛し理解した日本人知識人の苦悩、中国の演劇関係者の話など当時を知る上でとても興味深かったです。
終わりの(本名に戻ってから)部分が駆け足になってしまっているのが残念。(この本は李香蘭の時代を書きたかったのでそうなっているのだと思いますが。)私としてはその後の話をもっと知りたいです。
プロモーションビデオの一覧もあり。全ライブの記録とコメント。代表的な関係者のリストとコメント。最後には、楽曲から関連作品を逆引きできる索引まで有り。それほど厚みが無いコンパクトな新書サイズの本ですが、内容は充実しています。