ヒロインの孤独感や夜の描写がウィリアム・アイリッシュの作品を想起させる『恋人』(原題ではこれが表題作)、“タイムトラベル・ホラー”とでも呼ぶべき分野を開拓した『裂けた時間』、幸せの絶頂にある女性の自殺の原因を夫に雇われた探偵が究明していく『動機』などが特に気に入りました。『レベッカ』と『鳥』(本書のことではなく、本書の収録作である短編のこと)だけで語られるのは惜しい作家です。 作者への興味がわいてくる充実の短編集 バラエティの楽しめる作品集だ。 収められている8編には今となっては良く知られているプロットの作品もあるのだが、一人称の心理描写や情景描写が優れていることと、ホラーやサスペンスさらにファンタジーやSF作品もあったりして厭きさせない。一編毎に感心しながら、あっという間に読み切った。それは「ヒッチコックの映画『鳥』の原作も含みます」と言い添えておけば充分なぐらい各作品のレベルが高いと言うことだと思う。 この作者への興味が非常に増してきて、嬉しい収穫という気持ち。
の曲を、このアーティストを推薦するのかという理由に厚みを加えている。「何年に発売」「チャート何位」「ブラックミュージック史の中での位置づけ」……そんなデータの羅列じゃ、マニアならざる人の心は動かないわけですよ。自分の来歴を語り、それとブラックミュージックとの関連を語る。筆者がその時いだいた感覚に読む
側が共感を抱いたとき、初めてリアリティをもってブラックミュージックが響いてくる、という仕掛け。 そもそもブラックミュージックに対してはアウトサイダーに過ぎない日本人が大半なわけで、ガイドブックにリアリティをもたせるためには自分語りをせざろうえなかった、と勝手に思い込んでます。 あ、でもデータも充実です。 印南印R&Bディスク・ガイド『Juicy』シリーズでおなじみ、印南敦史のR&B本。単なるガイドブックではもうあきたらないと、フェイヴァリットR&Bディスク/アーティストをイントロデュースしながら、「自身の半生を回顧する」的な一冊。ゆえに、彼の生き方に共鳴している人には読み応えのある内容かも。80〜90年代については『Juicy』で紹介し尽くしたか、ディスク・ガイドは60〜70年代R&B中心。彼がスタイリスティックスに初めて会ったときのエピソード、ほほえましいですね。 こんな気楽な、でも熱い音楽本。最高でした!!一瞬、その分厚さに躊躇したのもつかの間。
うんちくが書いてあると見せかけるタイトルとは裏腹に、実は紹介アーティストにまつわる著者のエッセイがちりばめられた力の抜けたレビューで、ぐいぐい読めてお勉強もできるステキな本でした。
著者の音楽愛を最も感じたのは、うんちく本にありがちな絶版CDを紹介するなどということなく、思い立ったらすぐ手に入れられるような現行ライン満載のご紹介。「まずベストを買ってみるのも…」なんてレビュー、優しいじゃないですか!!
良い音楽を多くの人へ、という心意気のつまった一冊だと思います。超・大満足!! 読み物としてもガイドとしても良い、音楽好き向け図書ブラックミュージック(以下「BM」)って、好きが昂じると、だんだんワイン通的な世界にはまりがちな気がする。「何年にリリースしたアルバムの録音からバックバンドに誰々が加入して、それからリズムがこう変わった。」とか。そういった情報は、それはそれで興味深いんだけど。
かといって、一応BM好きとしては、「そんなの知ってるよ!」という初期情報だけが詰まっている本は買う気がしない。その点、この本は、過去に聞いた曲の多寡に拘わらず、「読書」の範疇でも楽しい本。著者は、あとがきでも「ガイドブック(以下「GB」)は書く気がしないがGBの有用性は否定しない」旨記しているが、まさにその言葉どおりの本だと思う。GBとしては、データもさることながら音の風景や味が伝わってくるのがイイ。塩分何%と言われても料理の味は伝わらない。音楽もそう。加えて、著者の人柄なども伝わってくる。多分、著者は、フロアでOHIO PLAYERSのFunky Warmがかかっても、DURAN2のThe Reflexがかかっても踊(れ)る人だと思う。