その中でも、今回のギリシア・ローマ名言集は211もの含蓄ある言葉が並んでおり、ページを開いた瞬間から唸らせられる言葉の連続で、シリーズの中でも白眉だと思います。薄い文庫ですが、一言、一言じっくり読む必要があるので長く楽しめます。
とにかく、教養の一つとしてギリシア・ローマの言葉を文庫で気軽に読めるのは嬉しい。
フロイトは徹底したリアリストです。同じ課題を繰り返し提出し、分析し、説明し、推敲し、修正し、定義し直します。マルクスにも矛盾をそのまま提出しながら現実に近づこうとする傾向は見られますが、マルクスは人間のあるべき方向を示そうという努力もしています。一方フロイトは、ただ現実世界で生きる人間の赤裸々な深層心理をえぐり出すだけで、甘い理想は決して口にしようとしません。−−人間を理解するために動物に対する以上の手段は必要ではない! どうして他生物の存在意義を問わないのに、人間の存在価値だけを問題にするのか? 人間は意識(自我=私)によって生きているのではなく、無意識(エス=それ)によって生かされているのですから、人生の意味を問うことなど本来不要なのです。人間は他の生命体と同様、もともと無目的に存在しています。 フロイトの方法によって、人類がなぜ殺し合うのかを明らかにできるかもしれませんが、だからといって、その分析が、人類の戦争放棄の可能性を示すことを意味しません。ーー私にとって、フロイトほど恐るべきニヒリストはいません。