そして次に、皮肉なことに早々に軍人の道を外れた甘粕こそが、昭和期を通じて、陸軍の最も理想的な軍人の一人であったという事実。強い愛国心と天皇への忠誠心、規律を遵守する強い意志、目的達成のために慣習に囚われない合理的思考、組織を統率するための強いリーダーシップと部下へ優しさや人情味、人脈作りと情報収集能力、どれをとっても並の軍人には及ばない実力を、甘粕は満州で発揮した。
本書は甘粕の裏面(諜報活動や阿片取引など)について詳しくは述べてはいないが、甘粕が表社会でも裏社会でも人望を得た背景にある複雑な人間的魅力を、著者は丹念に説明している。同時に、表紙の写真が、澄み切った強い意思と冷酷さ、大いなる諦念が共存している甘粕の魅力を物語っている。
司馬氏の講ずるところは、今までの小説、エッセイ等のの集大成的なもので納得と供に「またこの話か」といったところです。楽しめるのはキーン氏の異国人としての客観的視点かつ充分な研究に裏づけられた意見、返答に対し「巨人」司馬氏もしばしば旗色が悪くなる場面がしばしばある点です。無論、成熟した大人の二人ですので醜態をさらしたり、各々にとって独善的な結論となることはありません。司馬氏の考えに対し共感を多く得ていた小生としては驚愕の念とともに斬新な1冊となりました。
両氏のコラボレーションは現場の雰囲気を夢想してしまうほど濃密かつ異次元なものです。司馬遼太郎ファンの方はかなり楽しめると思います。 対談本でもおもしろい 対談本って、安直な読み物のような気がしてあまり好きではないのですが、この本は大丈夫です。読めます。
日本人の美的意識について、本書はその多くの時間をかけています。日本文化の美意識がどこから生まれ、何に影響されたのか。彼らが言う吸収しても排出しない日本文化、そんなものをより深く理解させてくれます。
司馬氏はともかく、ドナルドキーン氏の日本史に対するその知識の深さには驚かされます。
不景気で日本人が自信をなくしている昨今、元気が出る一冊です。
ところがもとより1000枚のばらばらの紙片、これではどうも学びにくい。そこで武帝は、周興嗣という詩文をよくする者を呼び寄せた。普段は詔勅の起草などをやってる人物である。「この千文字を余さず使って、韻文をつくれ」。
周興嗣は命を受け、一晩かかって四字一句、計二五○句の整然たる韻文一編をつくり、武帝に奉った。彼はその苦心のために一夜で髪が真っ白になったという。世界一速成の、命がけの教科書。
よくできた韻文は唱えやすく、したがって覚えやすい。用いられる修辞にもそれぞれ典故(モトネタ)があり、その後出会うであろう漢文のエッセンスが満載である(注解は、千文字しかない本文に、凝縮されたネタを丁寧に説きほぐして、漢文古典マメ知識の宝庫である)。おまけに字はあの王羲之だ。
伝説の当否はともかく、『千字文』は漢字文化圏の児童が最初に文字を学ぶ初等教科書また習字手本として永らく用いられた。中国大陸はもとより、朝鮮半島、日本、モンゴル語訳まである(近世には英仏独伊羅語に翻訳され、ヨーロッパ版も作られた。
『千字文』は中国の「いろは」である。本当にこれで数を数えてたことがあるらしい(天−1、地−2、玄−3、黄−4、……)。科挙の試験の席番号なんかはこれであった。
描かれた内容はかなり楽しめました。歴史的な資料としても価値があるそうですし、知的欲求がある方は買いです。お薦め!