この一冊から私のエリザベート崇拝が始まりました。
A軍部組織が自己革新力を失ってしまったこと。これは昭和の軍隊の組織保全原理による、人事や形式の硬直化、反省の欠如、セクショナリズムとして顕在化していきます。
こうした問題は「失敗の本質」でも指摘されていること、その著者の一人である野中郁次郎氏の印象的な言葉も本書で紹介されています。「組織の成功の秘訣は、本質を議論すること。徹底的に本質を議論できる組織の土壌をつくること」。組織も長くなると、過去の経緯や人間関係など本質と関係ないところで意思決定がなされ、判断が歪んでしまうもの。本書の文脈に沿うと、本質論を欠いたことが、歴史の教訓、といったところでしょうか。 良かった時点にも焦点を当てて 日本人である著者が将来の日本のために日本を愛する観点に立って取組んだ真心の作。日本が近代史に経験した「転落」の歴史を題材に、ここから学ぶべきことを整理・分析し、今後日本に必要な人材と、彼らによって組み上げられる各世代役割構成の戦略設計提案を試みています。人材として日本が開拓してゆくべき焦点の本質は「ジェネラリスト」のもよう。早稲田大学創設者・大隈重信に代表される明治の元勲たちが、生来のジェネラリストとして、奉天会戦による日露戦争辛勝を支えたと論じ、過去の人材モデルの彼方に対比されています。「転落」したからこそそこに学ぶべきものがある、との趣旨ですが、良かった時点(奉天会戦)とその要因分析が確固として提示されていることにも焦点を当てたい、と感じました。司馬遼太郎氏の言葉を借りて、日本が「魔法」の森に誘い込まれた、と昭和初期「転落」の一時期を描いた箇所がありますが、日本のアジア侵略時代におけるとくに朝鮮(韓国)人から日本人への怨念、という霊的攻撃要因が私には浮かびました。作品全体に貫かれる整頓された展開構成は、著者が米国留学の論文書きで訓練されたことをしのばせています。ただそうしながら本来追及すべき説得性、論証性という意味では、最終章の世代論はやや弱いでしょうか。