筆者自身の弁によれば、「組織についての学問的研究があまり進んでいない、現代の組織を研究するには機密の壁という障壁があり難しい。」とのことでしたが、確かにその通りだと思います。 しかしながら、本書の発刊後の時代は、「バブル崩壊と日本経済の低迷」「年功序列と終身雇用の崩壊」「ルノーにる日産自動車のM&A、ゴーン社長によるV字回復」「金融自由化・護送船団方式からの決別」etc. があり、様々な組織研究のケーススタディ本が発刊されているように思えます。それは、時代の変革期において、誰もが、暗闇の中の光明を求めているからだと思います。 金融ビックバンとか、○○民営化とか、公務員の天下り問題とか、U印乳業の食中毒(食品安全管理の形骸化)、M菱自動車のクレーム隠蔽。。。新聞の第一面を賑わしている構造改革と不祥事というものは、組織論的に見ると、すべて「共同体」組織から「機能体」組織への変化が根底にあると、私には思えます。最近10年の日本を振り返れば、堺屋さんの先駆的な慧眼に感服するばかりです。
そういえば、こんな格言がありますね。 『歴史は繰り返す。』本書的に意訳すると・・・旧組織に対抗して勢力を伸ばし、やがては旧組織を滅ぼしてしまう新興組織も、時間が経てば、また新たな新興組織に滅ぼされてしまう。常に自己変革をしつづける組織だけが生き残ることができる。『奢れる者は久しからず。盛者必衰の理をあらわす。』
著者は、憲法9条と日米安保という矛盾を抱えた(それは日本が大国を諦めたことを意味する)吉田路線がどのようにして生まれ、それから後の政権がどのようにして吉田路線に吸収されていったか(=吉田路線がどれだけ強固だったか)、その中でどう自主性を追求しようとしたかを丹念に記述する。
非常に優れた分析だと思う。著者の言うように、憲法が押し付けられたかどうかということに拘泥するのではなく、正しい現実認識に基づいた未来志向の外交論が活発になることを期待する。
唯一残念なのは、日米安保の交渉で、日本が憲法9条を捨てて再軍備化すべきだというアメリカの圧力に対し、吉田首相が憲法9条を守ろうとしたのはなぜか、書いてないことだ。恐らく日本社会の状況からいって無理だと踏んだのだろうが、アメリカに対する完全な軍事的従属を拒んだため、という解釈も成り立つ。吉田路線を読み解く上で非常に重要なので、画竜点睛を欠く感がする。とはいえ、この本の素晴らしさが大きく損なわれるわけではない。 ミドルパワー=混沌とした世の中を生きぬくための処世術?「日本のミドルパワー外交」と聞いて、思わず中年男の復権を狙った本と勘違いしてしまったのは私だけでしょうか?著者によると、ここでいう「ミドルパワー」とは、核能力をもち、その気になれば国際政治の構造そのものを変えることができるような能力をもつ「大国」と区別するために使われているようです。日本はそういった種類の大国ではないのだから、無駄に「大国」外交を目指すよりは、それ以外の分野で頑張ろう!という非常に分かりやすい議論です。言われてみると、戦後日本の姿って、確かに「ミドルパワー」だったような気も・・・・・・。でもそうすると、わざわざ日本を「ミドルパワー」って呼びなおす必要はあるのかしら?著者によると、日本を「ミドルパワー」として捉えなおすことで、「日本外交の視界はかえって明瞭になり、その等身大の実像が浮かびあがり、日本外交の役割と自立性が高まる」そうです。たしかに周りを見渡しても、自分の強みを自覚してそれを実践する人とそうでない人では、大きな違いがありますよね(演技力のなさを自覚して、あえて“素”の演技で押し通すキムタクのように)。それに、近隣諸国の人たちからすれば、「平和国家」なんていう胡散臭いフレーズよりは、「ミドルパワー」の方がすっきりして逆にいいのかも、なんてことを思いました。長く読み継がれそうな一冊です。