著者がいかにも新聞記者出身らしく、国政選挙における各党の動向を議席数・得票率などの具体的データを交えつつ比較的詳しく記述しているのが一つの特徴だろうか。「どんなことがあったかをコンパクトに記録することを少なくとも第一義に」考えて執筆したということだが、新たに加えられた山口二郎北大教授の担当部分には、より書き手の政治的スタンスが記述に反映している、との印象も受けた。特に小渕内閣以降の国政の変容は、冷静に記述するにはまだまだ生々しいものなのかもしれない。
元々この種の本は読んでいて「楽しい」というものではあまりないし、ある程度戦後史の予備知識のある人でないとポイントがわかりにくい部分もあるように思う。一通り戦後史を勉強した人が知識を整理しながら読むのが一番いいのではないだろうか。
本書では総論である第1, 2, 4章、それからコラムがとりわけ興味深い。これに対して各論はまるで医学書の抄出のようであり、アンチョコとしては役立つと思うが、医学書を日常読む立場から見ると、読み物としての新味はない。しかし明らかに本書は興味本位の書ではないのだから、これでまったく構わないと思う。
各国の建前上の正義と、裏でこっそり行っている悪魔の所業。いつ、どこで、何をしでかすかわからないテロリストの恐怖。知恵の林檎を手に入れた野蛮な生物は、有史以来わずか数千年にして、いつ、どの方法で自滅するのだろう。
基本的には、共和党の人脈と中心に解明していて、イラク戦争は石油利権ではないことや、石炭産業、ひいては“京都議定書”の胡乱さなどもここからは読み取れる。
驚かされるのは、いま行われているアメリカ大統領選で、ほぼ確実に民主党候補となることが決まったジョン・ケリーについて、共和党を分析したこの本で、ほとんど唐突といってよい流れで約10ページにわたり研究・分析し、ある種の期待をもってケリーを見ていることである(まだケリーが4番手くらいの扱いだった去年の夏頃の執筆であると推定されるにもかかわらず――広瀬隆の情報網を久しぶりに凄いと思った)。
このケリーへの「期待」がどう転ぶのか? アメリカの新旧保守を刺々しい文体で概観まず最初に、ネオコン(新保守主義)やイラク戦争の背景となっている利権が石油に絡んでいるのではなく、好戦的シオニズムに拠っているという指摘がなされている。石油利権の追求は経済的にも政治的にも理に適っていないという指摘は確かにその通りだと納得した。また、筆者は何度となく、ネオコン族は利権だけを狙う実務経験のない独善集団だと辛辣な調子で糾弾していますが、政治家とその取り巻きとはベクトルの向きに違いはあれ常にそういう人達ではないでしょうか。
ネオコンや石油利権の話から話題は急転し、アメリカのエネルギー事情へ。アメリカのエネルギーの主要源が石炭であり、アメリカには無尽蔵ともいえる石炭が埋蔵されていて、その石炭利権を(そして石炭を運ぶのに必要な鉄道の利権を)一手に握っているのがアメリカの保守本流であるとの指摘に飛躍。この利権に絡む人脈は幅広く調査されていて興味深い箇所もありましたが、だから結局どうなのかという結論が非常に弱いと感じた。汎イスラエル主義へ結びつけても説得力に欠けていますし、最終章ではなんだか支離滅裂ささえ感じた。 イラク問題は石油問題ではない広瀬氏おなじみの,「すべてはつながっている」論法で,現在のアメリカ右傾政策への追従のアホらしさを説いた作品。イラク問題は石油利権問題ではなく,鉄道資本こそを背景とした汎イスラエル主義の問題だとの一貫した指摘は,私には目新しくかつ諸事件と辻褄が合うもので意義深い。ただ,さまざまな問題を新書に詰め込んだため,話題は猛スピードで次々と展開するが,おかげで飽きる間もなく読了できる。最後の結論が,「燃料電池があれば幸せになれる」なのは,広瀬氏ならではだが,そんな支離滅裂に訴えねばならないほど,現在の情勢は絶望的ながんじがらめに陥ってるのだとのメッセージだと私は受け取った。 トンデモ本論外。
明らかに系図にこだわり過ぎ。上流階級が婚姻関係でつながってるのは常識であり、別にアメリカに限った話ではなく、どんな体制の国でも普通のこと。日本でも皇室を中心としたネットワークはできているが、別に彼らが共謀して何か企んでいるわけではない。もし欧米人がこんなに親戚の利益ばかり気にするのなら、親戚だらけであった中世ヨーロッパの王国では一切の戦争が起こらなかったであろう。著者が愛するであろう共産主義社会ならいざしらず、資本主義においては「上流ゆえ成功する」のではなく「成功ゆえに上流へ仲間入りする」のである。確かに上流の子弟は上流であることが多いが、それはただ単にスタート・ラインが有利であるからに過ぎない。いくら大金持ちの家系でも、無能な後継ぎが2代続いたらその家はつぶれるだろう。
はるか遠くの親族の利益のために自分の社会的地位を利用しようという人間などどれほどいるであろうか、私にはそれが理解できない。ド・ヴィルバンを両良心に基づいて私利に反してまで行動したと褒め称えていたが、卑しくも外務大臣を務める者が国家の一大事に自分の養父の利益を国益よりも優先するということなどがありえるのだろうか。ド・ヴィルバンが良心に基づいて行動したのなら、ブッシュやネオコンも自分なりの良心に基づいて行動していたとは言えないのだろうか。ブッシュが無能だからでは説明にならない。
なんでもかんでも陰謀論に結びつけるのは私は関心しない。人間にとって、経済的利益などほんの一側面である。経済的利益よりもプライドや思想や論理が優越することなどいくらでもある。親戚の経済的利益など言わずもがなである。著者はノブリッシュ・オブリージュ(高貴ゆえの義務)を背負ったエリートを信用しなさ過ぎである。
まだノストラダムスの大予言の方が信憑性がある。
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